コスモススタジアム長崎で開かれ、本市からは市大会で選考された53人(男30、女23)が出場した。1年女子八百㍍決勝で野村夏希(郷ノ浦)が2分25秒32で優勝、共通女子走り幅跳び決勝で長岡幸奈(郷ノ浦2年)が5㍍14で2位となり、2人は九州大会(8月9、10日・佐賀県)への出場を決めた。学校対抗では、2年連続で2位だった男子の郷ノ浦は5位に終わったが、女子の郷ノ浦が5位に入る躍進を見せた。
壱岐からニューヒロインが誕生した。小学校時代から県小学生駅伝で優勝メンバーとなり、全国小学生クロスカントリーリレー3区で区間4位になるなど、卓越したスタミナで成績を残してきた野村が、県大会中学デビュー戦でその存在感を十二分に見せつけた。気温35℃を超える厳しい条件で行われた1年八百㍍予選B組。先に行われたA組は田中恵愛(勝本)が2分29秒28の1位で通過していたが、予選は各組3位までが無条件で通過できる。その条件をしっかりと把握して、野村は直線で後ろを確認しながら流して、2分32秒82の3位で通過。午後の決勝に向けて体力を温存するクレバーな戦略を立てた。
そして午後の決勝。下がらない気温から記録よりも順位を重視した野村は2~3番手でじっと我慢し、最後の200㍍で仕掛けて先頭に立つと、一気に後続を突き放した。最後はガッツポーズを決めながら笑顔のゴール。2位に3秒近い大差をつけ、予選タイムを7秒以上詰めて圧勝した。予選で体力を消耗していた田中は予選よりもタイムを落として7位に終わった。野村は「予選は少し抑えすぎて、決勝で大外のコースになってしまったのはやや計算外だったが、前の動きを見ながら我慢して、最後に仕掛けることができた。前のレース(1年男子千五百㍍決勝)でまさかあの(竹下)紘夢君(郷ノ浦1年)が負けてしまったのを見て、県大会というのはすごい怪物がいっぱいいるのだな、と思っていた。慎重にレースを進めたのが良かった」とレースを振り返った。
野村が会場を驚かせたのは、むしろ4位に敗れた2日目の共通女子千五百㍍決勝の方だった。32人の出場の中で1年生は野村1人だけ。練習量、体力が重要視される長距離戦では学年の違いがより明確な差になるのが一般的。野村はスタートでやや出遅れ、2~3年生のペースの速さに戸惑い、1~2周目は中団で追走するのが精一杯だった。だが野村はラスト1周からスパート。コースロスも気にせずに外から先行選手をごぼう抜きしていき、4位まで上がってゴール。スタンドからはどよめきが上がった。4分51秒63は、市中体連のタイム(5分09秒9)を18秒以上も短縮した。野村は「ラスト1周でまだ余裕があったので、必死で先頭集団を追ったが、4位になれるとは思わずビックリした。表彰台の3位、九州大会出場権の2位には届かなかったが、今後の自信につながるレースになった」と笑顔を見せた。
全国小学生、ジュニアオリンピックと2年連続で全国大会に出場している長岡は、本職の走り幅跳びに加えて百㍍、リレー2種と計6レースに出走する大車輪の活躍。走り幅跳びで2位、2年百㍍は12秒94で3位と、2度の表彰台に上がった。長岡は「走り幅跳びはジュニアオリンピック参加標準記録の5㍍35を目指していたので記録的にはやや残念だったが、5㍍14は自己ベストで、九州大会にも出られることになった点は良かった。優勝した選手(3年)はすごくレベルが高かったが、2年生同士なら負けられない気持ちだった。百㍍の12秒94も公認記録では自己ベストだったが、やはり2位以上に入りたかった。相手を意識して走るのではなく、自分の走りに集中しなければならないと感じた」と話した。
走り幅跳び、百㍍の二刀流に加えて、今年1月の壱岐の島新春マラソンでは10㌔でも一般ランナーを相手に独走したように、身体能力の高さはケタ違いのものがある。今大会も竹下紘夢、田中咲蘭(芦辺2年)、長門虎太郎(郷ノ浦3年)、竹口然(郷ノ浦3年)ら有力選手が本来の力を発揮できない異常な暑さの中、2日間ほぼ出ずっぱりでもケロリとしていた体力、自己ベストを連発した精神力の強さは傑出していた。今後も壱岐の陸上界をけん引していく存在になることは間違いなさそうだ。