社説

避難者の立場で防災計画を。

市は1月26日、原子力災害避難計画を発表した。玄海原子力発電所で原子力災害が発生した場合に備え、放射線の影響を最小限に抑えるため半径30㌔圏内の住民を、圏外に定めた避難所へ退避させる計画で、公民館単位で集合場所、避難所とその経路を明示した。例えば郷ノ浦町郷ノ浦と永田の8公民館1048人の避難所は勝本中学校で、原則として自家用車で国道382号線を通って避難。自力で避難できない住民らは郷ノ浦中学校に集合し、市が手配した車で避難する。

実際に30㌔圏まで放射能が到達した場合に島内圏外に避難することの有効性については別にして、避難計画が一歩進んだことは間違いない。だがこの避難を実施するためには、まだまだ困難が多い。避難所に指定された学校、公共施設、公民館などに毛布や飲料水などの備蓄はないし、トイレは圧倒的に不足。パーテーション(間仕切り)やシャワーもない状況では、長期間の避難生活は難しい。体育館の温度調整にも難がある。

原子力防災の場合は断水、停電などライフラインの心配はあまりないが、震災で避難が必要な場合は断水、停電も想定した避難所の設置が必要となる。簡易トイレ、貯水・給水車、発電機などの設備は島内にはまったく不足しているだろうし、災害時に島外から搬入するには相当な時間を要する。飲料水、食料、ラジオ、懐中電灯などは市民自らが準備する必要があるが、簡易トイレや発電機となると困難だ。自主防災組織に上限200万円の設備整備費を100%補助するコミュニティ助成事業があるが、十分に活用されているとは言えない状況だし、簡易トイレを購入して公民館に備蓄しておくことは不可能だろう。

市長は常に「防災は行政最大の責務である」と語っている。簡易トイレや発電機などは建設業者に対して助成し購入・管理してもらい、災害時には迅速に運搬・提供してもらえるシステムの構築などが必要ではないだろうか。

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