今年度最初の市航路対策協議会(会長・白川博一市長)は12日、市役所郷ノ浦庁舎で開き、九州郵船(竹永健二郎社長)から万谷住雄取締役営業部長ら2人が出席。ジェットフォイル(JF)の指定席化を今年11月頃から開始する計画を明らかにした。懸念されていたJFの更新は、ヴィーナス2(昭和60年建造)が平成40年頃、ヴィーナス(平成3年建造)が平成45年頃に新船建造を行う目途を提示。8~10月の燃油調整金は引き続き無料になることを報告した。また、同社壱岐支店の社員(すでに退職)が運賃を着服していた事件があったことを認め謝罪したが、詳細については調査中であることを理由にこの日は明言せず「早急に検討する」とした。
ネット予約対応できず
JFの指定席化は、市民からの要望が強くあり、昨年1月の同協議会で同社に対して要望していた。当初は28年度中の実施を予定していたが、システムのプログラム変更などに時間を要したこともあり、今夏の繁忙期を終えた11月からの開始となった。
同社はすでにJF2隻の座席を同じ仕様にする改修工事を完了。今後、座席番号割り振りに5百万円、予約販売システム改修に7千万円など計約9千万円をかけて指定席化に取り組む。
だがインターネットでの座席予約システムは「費用面などで難しい」と、座席予約は2日前まで電話でのみ対応。「窓口で希望の座席を聞くことは混雑につながるため行わない」とした。全席を指定席化するかどうかは、「優先席8席の取り扱いもあり、まだ決定していない」と答えた。会からは「電話対応だと電話の混雑や人件費もかさむので、将来的にネット予約システムを導入して欲しい」「当日窓口でも、家族などが離れた席にならないように、配慮してもらいたい」などの要望が出された。
東海汽船が51億円で建造
「新船建造は長年行われておらず、もう技術的に不可能ではないか」と懸念されていたJFの更新は、東京・竹芝や熱海と伊豆諸島を結ぶ東海汽船のJFセブンアイランド虹が建造から36年が経過して老朽化したため、今年5月に新造船を建造することを発表したことで、大きく流れが変わった。
東海汽船の新造船は川崎重工が25年ぶりに請け負い、約51億円で建造。平成32年7月就航を予定している。今回は修理用システムを準用する形で建造するが、同船の建造により生産ライン、建造技術が復活することも予想され、生産ライン1ロット(5隻分)の注文がまとまれば、本格的な生産再開の可能性も高まってきた。
九州郵船は「前例ができたことは大きい。51億円という価格なので、当社の2隻、九州商船の2隻を合わせると4隻で200億円。このうち県が半分の100億円を拠出できるかなど、まだ不透明な部分も大きい。だがJFの寿命を四十数年とすると、ヴィーナス2はあと10年、ヴィーナスは15年ほどで新造が必要になる。フェリーげんかい、ちくしのリプレイスもあるが、造船計画を立てていきたい」とJF更新に意欲を見せた。
会からは「全国に23隻のJFがあり、旅客船組合で協力して注文をまとめることは可能なはず。まとまれば価格も安くなるはずで、早急に協力してもらいたい」「事業計画がはっきりとしないと、県、国への要望もしにくい」などの意見が出され、白川会長は「8月下旬の次回協議会までに、指定席化も含め九州郵船の具体的な計画を示して欲しい」と要望した。
8~10月無料 燃油調整金
財務省がこのほど発表した4月の原油CIF平均価格は1㌔㍑当たり3万7613円だった。九州郵船が定める燃料油価格変動調整金ゾーン金額表で、1ゾーンの最低価格(4万4574円)を下回ったため、5~7月に引き続き調整金は無料となることが、九州郵船から報告された。調整金無料は昨年2月から7期(1年9か月)連続となる。
運賃着服の疑い 刑事告訴検討
会の顧問を務める山本啓介県議は、一部全国紙で報道された九州郵船壱岐支店元社員の運賃着服疑惑について「民間企業とはいえ公金が入った事業を行っており、公共交通機関を担っている会社なのだから、きょうは所用があったとのことだが、本来はこの会に社長が出席して説明をするべきだった。いつどこで説明をするのか」と同社の説明責任を追及した。
万谷部長は「元従業員に不正があり、申し訳ありませんでした」と謝罪。「詳細については現在調査中。顧問弁護士と相談をして、刑事告訴を視野に入れている。発表については社に持ち帰り、早急に検討する」と答えた。
同社によると、元社員はフェリー貨物運賃を業者に対して水増し請求して着服を続けた疑いがある。横領した金額は数千万円規模に膨らみ、金額が大きくすぐに返済することが困難なことが見込まれることなどから示談とはせず、刑事・民事告訴の手続きを進めているという。