内閣府は8月30日、国境離島新法に関して、施行初年度となる平成29年度関連予算の概算要求を公表。離島と本土部を結ぶ航路・航空路の運賃引き下げなどに充てる「地域社会維持推進交付金」(仮称)の創設に50億円を計上した。交付率は2分の1の予定で、地方自治体の負担分を加えた事業費ベースでは100億円となる。また各府省計上の離島向け予算も国費ベースで7億円増額する。本市では、市内の経済団体代表らでつくる「壱岐市国境離島協議会」(会長・川﨑裕司JA壱岐市組合長、19人)を8月31日に設立し、新法への取り組みを本格化させた。
地域社会維持推進交付金は、新法で指定された全国15地域71島の「特定地域」(壱岐地域は5島)に対して、①航路・航空路の離島住民運賃について、一般離島の運賃等とのバランスに配慮しつつ、JR運賃並・新幹線運賃並の引き下げを支援、②滞在型観光の促進に対する支援、③一定の地元産品や物資に係る輸送コストの低廉化を支援、④創業・事業拡大や交流拡大を行う事業資金等を総合的に支援、民間事業者等に事業のスタートアップ融資資金に対する利子補給を実施ーの4本の柱となる。
また平成28年度補正予算に国費3億円を計上し、「専門家を現地に派遣・駐在させ、地域に寄り添って都道県計画や各事業の構想・戦略の策定を支援する」事業も行う。
離島向け予算の増額に関しては、戦略産品に係る輸送コストの低廉化の支援等拡充に充てる離島活性化交付金(国土交通省)を前年度12億円から16億円に、離島漁業再生支援交付金(水産庁)を同12億円から15億円に増額。資源エネルギー庁はガソリン流通コストの低減に必要な経費(実費相当)を、水産庁は漁業燃油等の支援に28年度補正予算で40億円を計上。総務省はブロードバンド、携帯電話等の情報通信基盤整備についてニーズを踏まえ適切に対応する。
その他、有人国境離島地域の保全関係として、海上保安庁が離島部署の施設整備や航路標識の防災対策、防衛省が部隊の新編・増強や装備品の能力向上、水産庁と国土交通省が港湾・漁港・道路・空港の整備などの予算を計上した。
この公表を受けて設立した市国境離島新法協議会は「県、市、市議会、民間会議が一体となって、市のマスタープランを県の計画に盛り込んでいかなければならない」(川﨑会長)、「航路運賃、流通コストの低廉化はある程度国主導で進むが、雇用機会の拡充がもっとも難しく、最大のポイントとなる。オール壱岐で取り組んでいかなければならない」(顧問の白川博一市長)と今後の方針を議論した。
事務局からは、市の第3セクターで地域商社「株式会社 壱岐」(仮称)を設立し、壱岐産品を世界へ売り出す戦略への取り組み、消費者と生産者を繋ぐ司令塔、農水産物の販路拡大、地域ブランドの創出・育成、交流人口の拡大などに取り組むプランが提案された。
川﨑会長は「以前に観光物産館設立の計画があったが頓挫していた。再び物産館を視野に入れ、国からの人材活用や経済界の話を聞きながら、会社の設立を目標にしたい。人が来れば雇用も生まれる」と地域商社設立の方向で今後、会議を続けていく方針を決めた。