JA壱岐市の定例4月子牛市が9、10日の2日間、芦辺町の壱岐家畜市場で開催され、過去最高の平均価格57万7421円を記録した。黒毛和牛は品薄感が高まっていることから、全国のセリ市で高値が続いているが、なかでも壱岐家畜市場は子牛の管理の良さ、健康、血統の優秀などが評判を呼び、7年ぶりに記録更新された昨年12月市場の記録を、さらに上回る新記録が達成された。
新年度最初の子牛市とあって、関係者の表情に緊張感が表れていたセリ市会場。開会前にあいさつをしたJA壱岐市・川﨑裕司組合長は「豪州とのEPAで豪州産牛肉の関税が冷凍品では18年間で半分に下がるという、国会決議に反する合意がなされ、TPP交渉にも影響を与えそうだ。JAとしては日本の和牛を守るために、断固として反対運動を展開していく」と牛肉を取り巻く環境が一段と厳しくなることに、危機感を募らせていた。
だが市場が始まると、気前よく跳ね上がる落札価格に、関係者の表情は一気に緩んだ。初日も好調に推移したが、2日目になるとメスは70万円、去勢は95万円を超える高額落札も登場して大いに盛り上がった。
2日間トータルの成績は、入場747頭が全頭取引成立。販売総額は約4億3133万円、平均価格は57万7421円(メス54万1881円、去勢60万3053円)。去勢は昨年12月市場にわずかに及ばなかったが、メスが3万円以上も高くなったことで、全体の平均価格が昨年12月を約1万5千円も上回る新記録となった。
57万7421円の平均価格は、今年2月の全国市場価格との比較では、鹿児島・薩摩の59万162円に次ぐ全国第2位に相当するもので、県内では断トツの成績。昨年度の壱岐家畜市場の年間平均価格は50万3746円で全国7位、県内1位を記録していたが、今年度は全国順位でさらに上位進出が期待される幕開けとなった。
JA壱岐市・谷口覚畜産部長は「佐賀の大口購買者が300㌔以上の去勢を57頭も購買してくれた。メスは静岡、三重から新規の購買者が来てくれた。壱岐の牛は健康で、よく餌を食べると評判になっているし、もちろん枝肉重量の評価も高い。購買者にわざわざ壱岐まで来てもらうのには、他の市場を圧倒するような品質が要求されるのです。そのため講習会でも体重を増やしてセリに出すことを徹底してきました。そうした生産者の努力が実を結んだ、今回の価格だと思います」と分析した。
出場頭数は目標の800頭には届かず747頭。昨年の4月市場は814頭だったので減少は著しい。「生産頭数の減少はやはり大きな課題で、繁殖牛7千頭の早期回復を目指していかなければならないが、この高価格が生産者にとって、増頭意欲を促す刺激になることも間違いない」と谷口部長は市場成績が増頭につながることに期待している。
今回の市場でも主役を務めたのは249頭を占めた平茂晴の産子だったが、今後は新たな壱岐生まれのスーパー種雄牛「金太郎3」「北福平」の産子も続々と登場してくる。壱岐産牛はますます全国から注目を浴びる存在になっていきそうだ。