郷ノ浦町の原島に5日、壱岐市原島診療所がオープンした。市が開設し、玄州会光武内科循環器科病院(光武新人理事長)が指定管理者として運営。毎週木曜日の午後、診察を行う。原島にはこれまで医療機関がなく、住民はフェリーなどで本島の医療施設、大島の診療所に通院していた。同診療所の開設により、市の2次離島無医地区は解消された。
原島診療所は三島小学校原島分校に隣接する、児童数の減少で使用しなくなった教員住宅(木造1階建、床面積52・50平方㍍)を改装して開所。診察・処置室、待合室、職員控え室が設置された。
光武新人(あらひと)医師(67)は2012年1月に開設した三島診療所(大島)で週1回、毎週木曜午前中に診察を行っていたが、6月からは大島での診療後、フェリー定期船で原島に渡り、午後2時から4時までの2時間、同診療所で診察を行う。診療科目は内科、循環器内科で、看護師1人、事務職員1人を帯同する。
光武医師は「三島診療所ができて2年半。長島とは橋が架かっているので両島は一応、無医地区を解消できたが、原島では診察ができずに、歯がゆい思いをしていた。2週間に1度は原島を訪れて往診で対応していたが、やはり診療所があるか、ないかでは、住民の意識に大きな違いがある。木曜日の午後、2時間だけの診療所だが、それでもその時間に島に医師がいるということは、住民にとって安心につながるのではないかと思っています」と悲願だった原島診療所の開設に感慨深い表情を浮かべた。
原島には4月末現在、37世帯109人が暮らしており、高齢化率は34・86%。高齢者が本島へ診察に出かけることは、体力的にも、経済的にも辛く、住民は診療所開設を市に要望していた。大島在住のの久間進市議は「光武先生の尽力もあり、昨年12月市議会での条例案可決から、とんとん拍子で開設にこぎ着けることができた。まだ第一歩ではあるが、少しでも医療格差が解消できることは喜ばしい。この診療所で特定検診を行い、住民の不安を解消していきたい」と話した。
診察初日となったこの日、開所式が終わるのを待っていたかのように、2人の主婦が血圧測定と健康相談に診療所を訪れ「週に1日でも先生が近くにいてくださることは、本当にありがたい」と開所を喜んだ。光武医師は、診察の2時間の間に、寝たきり患者3人のための往診も行う。同医師は「医者として働くことができる限り、三島地区での診察は続けていくし、幸い、長男も加勢してくれるということなので、安心してください」と住民に説明した。
開所式で町田正一市議会議長は「同じ国民健康保険料を支払っているのに、これまで医療機関のない地区があったということは行政、議会の怠慢と言われても仕方がないことだった。この診療所が住民の心の支えの一助になることを願っているし、今後も医療格差の解消に全力で努力していく」と誓った。