1、2日に開かれた壱岐家畜市場の子牛市は平均価格が51万円台まで落ち込んだ。県内他市場は軒並み40万円台後半で、本市も昨年10月には48万円台になっており、その比較からは決して悪い数字ではないのだが、3年前には84万円台に高騰していたものが約6割の価格になった影響はやはり大きい。飼料や電気代も値上がりを続け、肥育農家だけでなく、生産農家の負担も増すばかりだ。「もう牛屋は辞めたい」という声も耳にする。
令和5年度の本市の農畜産物取扱高実績は約51億円で、このうち約23億円が子牛だった。取扱高100億円を目標に掲げるJA壱岐市にとっても、子牛価格の低迷は大きな痛手となっている。成肉牛も約15億円の取扱高があり、農業生産の約75%を牛が占めているのだから、牛は壱岐の基幹産業だと言えるが、繁殖牛飼育頭数は5700頭まで減少し、6000頭の早期回復に向けて各種施策に取り組み、チャレンジ7000事業も掲げているが、現状を見る限りかなり厳しい状況で、本市の第1次産業そのものがピンチになりかねない。
この状況を変えるためには、子牛を島外に売却するだけでなく、いままで以上に島内での肥育頭数を増やし、壱岐牛ブランドを全国展開させていくべきではないだろうか。そしてそのためには島内に屠場の設置が必要だと思われる。現在は、島内での肥育牛は島外の屠場に出し、精肉を再度、本市に輸送している。輸送費用がかかるだけでなく、希少部位なども手に入りにくい状況となっている。「壱岐生まれ、壱岐育ち」が壱岐牛のキャッチフレーズであるのに、地元感がやや薄いのはこの流通形態も影響している。
かつては本市にも屠場があったが、取り扱い頭数が少なく採算が合わずに閉鎖されたと聞く。屠場を再開し、希少部位を飲食店で提供したり、革や骨を利用して6次産業化を図ることで、壱岐牛のメッカとして売り出す価値は十分にあるのではないだろうか。