市民が中心となり対話を通じて壱岐市の未来を自分のこととして考える「壱岐なみらい創りプロジェクト」(社団法人壱岐みらい創りサイト主催)の今年度テーマ活動発表会が2月23日、一支国博物館多目的ホールで開かれた。今年度に4回行われた市民対話会で提案された8テーマ、壱岐高校・壱岐商業高校生徒、東京大学・九州大学の学生・院生、留学生が参加して昨年8月に実施されたイノベーションサマープロジェクトで出された3テーマの計11テーマの内容と進捗状況を、テーマオーナーらが発表。その後に参加者らと対話を行うグループセッションで意見交換した。
鵜瀬和奏さん(壱岐高校2年)らが発表した「医療でつなぐ壱岐のみらい」は、島内の医療を発展させて未来へとつなげる島づくりを目指すことが目的。具体例の一つとしてホスピス(余命の限られた患者の痛みや苦しみを和らげる緩和ケアのための施設)の建設を挙げており「島外からも最期の時を壱岐で過ごしたいという人を呼び込むことができる」と高齢Iターン者の増加なども目標に掲げている。高齢化社会を迎えホスピスの需要は全国的に高まっているが、近隣住民からは建設反対の声があり、なかなか普及していない。壱岐市が積極的に受け入れるとなれば希望事業者はあるはず。地元住民の理解、スタッフの確保など問題も多いが、美しい島で最期の時を迎えたいと考える人は多いはずだ。
「壱岐島にえいが館」は、福岡市在住のイタリア人、ダルプラ・フェデリコさん(27)がテーマオーナーとして提案した。ダルプラさんは「若い人にとって島には娯楽が少ない。異文化に触れる機会も少ない。映画とイベントが楽しめる“壱岐シネマ”に気軽に立ち寄ってもらい、お茶を飲みながら語り合うスペースが必要」とその意義を話した。壱岐島には人口が5万人以上だった最盛期の1960年代には9館もの映画館があったが、いまは1館も営業していない。ダルプラさんは「人口が2万7千人もいるのに映画館がないことに驚いた。廃校など既存の施設を改修して映画館を作ることはできる。インターネットや福岡のシネコンで観られる作品もあるが、多くの仲間と異文化に触れるためには映画館が必要。福岡・イタリア会館のシネアストのように、日米以外の映画を上映したい」と目標を語った。
安川建設の安川昭彦社長(51)らは「健康に暮らせる壱岐のすまい」のテーマで、高齢者が住みやすい住居の建設に取り組んでいる。「壱岐は九州本土より気温が1~2℃低く、家の中が寒い。寒い脱衣所から入浴すると、血圧が大きく上下して危険。日本では65歳以上の入浴時急死が10万人当たり18・34人と世界で断トツに多い。断熱材の適正使用、断熱性能の高い窓の採用で、市内の全ての住宅が常に温度差のない空間にしていくことが目的」と話した。すでに市内工務店のメンバーと7回の勉強会などを開催。「壱岐で住めば健康でいられることが知られれば、人が集まり人口減少の歯止めになる。健康改善することで医療費の削減にもつながる」と目標を語った。
イノベーションサマープログラムからの3テーマのうち2つは新たな名物グルメの開発で、養殖フグを使ったたこ焼き風の「ふくふくふぐ焼き」と、壱岐牛の焼酎煮をはさんだ「壱岐もんサンド」の提案と試食が行われた。「ふくふくふぐ焼き」は「フグの養殖が行われているのに、島内で食べる機会がない。フグ焼きの屋台を出して、フグ、イコール夏のイメージを作り観光客に提供したい」と提案。フグに明太子、大葉、ネギなどの材料、もみじおろし、マヨネーズなどのソースを組み合わせた。「壱岐もんサンド」は壱岐牛と壱岐焼酎という二大名物の組み合わせで手軽に食べられる商品。ハチミツ、ショウガなど臭み消しの食材を使い、壱岐焼酎で煮込み、パーカーパンに包んで完成させた。「今後は古代米、ゆべし、ゆず塩を材料に入れた試作品3種類を一支國研究会に制作依頼し、原の辻ガイダンスやあまごころ本舗での販売を相談していきたい」と話した。
サマープログラムから提案されたもう1つのテーマ、ゲーム感覚でごみ拾いボランティアを行う「イキヒロ~イキに拾っちみんな~」は、発表翌日の24日にイベント「拾イキ」を開催。高校生150人、一般20人の計170人が参加し、筒城浜、大浜、塩津浜でごみ拾いを行い、1時間半でトップは18袋のごみを収集。上位5チームには商品券が贈られた。
高校生など若い市民らの壱岐を変えるアイデアが、着々と進行しつつある。