横綱白鵬が通算33回目の優勝を果たし、不滅と言われた大鵬の記録を遂に塗り替えたことで盛り上がった大相撲初場所だったが、その白鵬が千秋楽翌日の会見で審判部批判を行ったことが大きな問題となっている。
問題の一番のVTRを見ると確かに微妙な部分があり、残念な発言だと思った相撲ファンも多かったことだろう。歴史に名を残す大記録を達成した横綱なのだから慎重な発言をして欲しかった、と思うのも当然の感想だろう。
だが現役スポーツ選手に対して、そこまで人格を求めるのも酷な気もする。大横綱と言ってもまだ28歳。親しい記者に愚痴をこぼしたくなる時もあるだろうし、前夜の祝勝会の勢いでつい口が滑ったという面もあったと思う。
昔のマスコミはもっと大らかだった。聖人のように思われている王貞治・現ソフトバンクホークス会長にしても、現役時代はかなり破天荒なエピソードが数多くあったし、長嶋茂雄氏にしてもイメージとは違うような言動があった。
選手と記者の癒着と思われるかもしれないが、必ずしもそうではない。言葉尻を捉えて批判的な記事を書くよりも、選手としてもっと本質的な偉大さを取り上げることの方が、ファンにとっても、そのスポーツ界にとっても、より盛り上がっていくと考えているからだ。新聞の場合、選手の言葉に印象を悪くするようなものや説明不足な部分があれば、その言葉は掲載をしなかったり、修正を行ったりしていた。
だがいまは、むしろ失言を求める傾向すらあるし、失言を引き出すような質問すら行う記者もいる。ネットで何でも流れてしまう時代なので修正ができない、という面もあるのだが、マッチボンプ的に失言で盛り上げていくのは、あまりにも世知辛い。
「肌の色と勝負は関係ない」と相撲協会は強調するが、外国人が親方になれない差別は続いている。失言で騒ぐのではなく、大きな視点で問題を見つめることもまた、マスコミの仕事だろう。