木造漁船漂着が相次いでいる。北海道の松前町沖の無人島では、島内の施設を荒らされて1千万円近くの被害が出た。漂着した乗組員は抵抗したり、強引に逃げようとするなど素直に事情聴取に応じなかったり、病人もいたりして、国、警察はその対応に苦慮している。被害や経費を請求できる相手でもなさそうだ。
漂着が判明しているだけでもこの1か月に20件以上に達しているが、もしかしたら発見できていない漂着船があるかもしれないし、最悪、すでに上陸して日本国内に潜入しているケースすら考えられる。レーダーに捉えにくい木造の小型船だからといって、日本海側の治安の危うさが改めて露呈している。
潮流などを考えれば、北朝鮮の漁船が壱岐に漂着する可能性は低いが、漁場によってはあり得ないことではない。また朝鮮半島有事の際には、韓国・北朝鮮からの難民が大挙して押し寄せるケースも考えておかなくてはならない。在韓邦人の避難も、航空機で収容できない人たちは航路で対馬に避難する計画があるというが、対馬だけで難民、邦人を収容できる規模の施設はなく、壱岐での受け入れも考えなくてはならない。
有人国境離島法とは、まさにこのような事態を想定して成立した法律なのだが、航路運賃低廉化や雇用拡大ばかりに注目が集まっていて、漂着漁民や難民に対しての準備は、壱岐ではまったくできていない。海上監視を目的に漁船燃油に対して補助はされているが、マグロの漁獲制限などで休漁を余儀なくされていることもあり、十分な効果が出ているとは言えない。
もし壱岐に北朝鮮から漁船が漂着したら、海保や警察が到着する前に、住民が危険に及ぶ可能性がある。軍事訓練をしているような北朝鮮の「漁民」に対して、市民は対処する術がない。壱岐島付近に多く点在する無人島に上陸されたら、実効支配のような形を取られてしまうかもしれない。治安維持について早急に考えるべきではないだろうか。