壱岐にガソリン価格破壊の波が到来した。2日、郷ノ浦町柳田触にオープンした「あぶらや市場壱岐ガソリンスタンド」(株式会社あぶらや、木原孝雄社長)は、レギュラーガソリン1㍑128円(税込み、現金払いのみ)、軽油1㍑107円(同)、灯油18㍑1296円(同、配達は1390円=36㍑から受付)の低価格で話題になっている。他のガソリンスタンドでも同程度まで値下げして対抗する動きを見せており、これまで全国平均価格と30円程度の差があり市民生活を圧迫していたガソリン価格が、一気に全国平均並みまで下落したことで、市民には喜びと戸惑いが交錯している。
低価格は今後も継続
本市に株式会社あぶらやを設立したあぶらやグループ(本社・福岡県筑紫野市、江﨑仁社長)は灯油宅配が本業だが、ガソリンスタンドも長崎3店、福岡5店、大分3店、佐賀1店を経営。独立系(石油元売り会社の系列に属さない)でプライベート・ブランド(PB)のガソリンを販売しており、離島でのスタンド開設は初めてとなる。
江﨑社長(36)は「石油協同組合に加入していないので壱岐の油槽所を使用することはできず、フェリーを利用してローリー配送を行っているので、本土に比べると輸送費は掛かっているが、それでも128円は十分に採算が取れる価格設定。この価格はオープン記念ではなく今後も続けていくし、将来的にはさらに下げることも検討している」と自信を見せた。
現在、同社が福岡で経営するスタンドの最安値は119円で、フェリーでの輸送に1㍑当たり5~6円の経費が掛かるが、離島ガソリン流通コスト支援事業で10円の補助があるため、その他の離島ならではの経費を含めても128円で採算が取れる計算だという。
ガソリン品質に絶対の自信
壱岐市内のレギュラーガソリン価格は最近まで150~160円で推移しており、120~130円程度の全国平均よりも30円程度高かったことで、市民の不満は大きかった。市議会一般質問でも何度かガソリン価格に関する質問があり、昨年12月の一般質問では土谷勇二議員が「本土との価格差が大きすぎる」と質問した。
白川博一市長は昨年11月の全国平均が126円、県内離島以外は133円、県内離島は154円、壱岐市は156円だったとのデータを示し「油槽所のある離島でも需要の規模によりタンクの容量が小さい場合はタンカー配送コスト、維持費が割高になる。月間販売量が全国平均に比べて4分の1から3分の1のためマージンが割高になる。自動車関連商品の販売、洗車、整備など燃料収益以外の売上高が少ない。従業員の大半が正社員である」などの理由を挙げて、理解を求めた。
だが江﨑社長は「洗車やカー用品販売はむしろコストが掛かるので、うちは行っていない。従業員は正社員で雇用しているが、窓ふき、車内清掃も一切行わずにコスト削減をしている。壱岐でガソリンが高かったのは、需要に比べてスタンド数が過剰だったためではないか。2万8千人の人口だと4軒程度が適正数で、売上が少ないために価格を上乗せする必要があったのでは」と分析している。
PBについて「安いのは品質が悪いからではないか」という不安の声があるが、江﨑社長は「それはまったくの誤解。品質確保法でPBは10日に1回の分析が義務付けられる厳しいシステムで管理されている」と強調した。
壱岐に根付いた事業展開を計画
ガソリン価格の下落は市民には喜ばしいことだが、大型小売店の進出と同様に、地元店が淘汰されてしまい、その後に採算が取れず撤退してしまうと「壱岐にスタンドがなくなってしまうのではないか」と不安を訴える市民もいる。
そんな声に対して木原社長(59)は「うちのスタンドがセルフのシステムを導入しないのは、ガソリン給油時にお客さんに声を掛けることで、灯油宅配に結び付けるため。これから高齢化がさらに進み、灯油宅配はお年寄りにとって必要不可欠になる。日本の高度成長期を支えてきたお年寄りに恩返しをし、30年間付き合って頂きたいという思いでやっている」と話した。
また株式会社あぶらやでは、4月5日に「あぶらや壱岐レンタカー」を開業。オープンカーのコペンやアーリーバスなどおしゃれな車種14台を揃え、観光事業にも力を入れている。「今後は民泊できるコテージを郷ノ浦町麦谷触にオープンするし、筒城浜で民宿やマリンスポーツにも参入する。観光面でも壱岐の活性化に寄与していきたい」と本市に根付いた事業発展を計画している。