勝本中学校1年の香椎彩香(壱岐少年サッカークラブ、佐世保・SCエスペランザ所属)が2~5日に宮城県で開催されたJFAエリートプログラム女子U‐13トレーニングキャンプに参加した。全国からこの世代の女子23人を選抜した将来の「なでしこジャパン」候補のエリートのみが参加。九州からは2人、長崎県からは香椎1人が選ばれた。女子サッカーチームがなく、離島のハンデを抱える壱岐から選出されたことは極めて異例で、香椎の選出は本人だけでなく、壱岐のサッカー少年少女に大きな夢を与えている。
キャンプは宮城・松島フットボールセンターを中心に行われ、西村陽介監督をはじめJFAナショナルトレセンコーチの本格的指導で、4日間にわたってトレーニング漬けの毎日を送った。炎天下での練習で、帰島した香椎の顔は真っ黒に日焼けし、逞しさと自信を増していた。
香椎は「長崎県からは1人で、知らない選手ばかりだったので最初は緊張したけれど、みんなから声を掛けてもらえて、すぐに打ち解けることができた。全国からの23人に選ばれたのはすごく光栄なこと。ボールのキープ力や裏を取る動きが評価されたのだと思う。練習はきつかったけれど、十分についていけたので自信になった」と手応えを感じていた。
香椎は138㌢、35㌔と選抜メンバーの中では佐々木ユリア(浦和レッズレディースジュニアユース=138㌢・29㌔)とともにもっとも小柄。大半の選手は150㌢以上で、160㌢台も5人いる。だが「身長差はあまり感じなかった。当たりは強くても、動き出しを早くすることで、ボールをキープできた」と自信を深めた。
キャンプは2024年オリンピックなどを目指して「世界基準をオンザピッチ・オフザピッチで示す」ことを目的とし、オンザピッチでは「サッカー理解を高める」「試合で使えるテクニックの獲得」「効果的に攻守に関わる」がテーマ。プレーの質・正確性・オフ時の準備のレベルを高めることに主眼が置かれた。
ベガルタ仙台U‐13男子チームとの試合では、テクニック・スピード・パワーで勝る相手にチームは苦戦したが、壱岐では常に男子の中でプレーしている香椎は「パス交換を早くして、シュートまで持って行くことができた」と戸惑いがまったくなく、堂々としたプレーを見せることができた。
オフザピッチでは、具体的・論理的に話すことで仲間とのコミュニケーション能力を高めること、栄養レクチャーでは「いつ・何を・どのくらい食べなければいけないのか」など食事の重要性について学んだ。また、なでしこジャパンが要求する質のこだわり、U‐13の選手に求めるものが提示され、世界を見据えて今やらなければいけないことを明確にするなど、エリート教育が施された。
香椎の中でこれまではぼんやりとしていた「なでしこジャパン入り」という夢だったが、「目標がはっきりと見えてきたように思える。澤穂希選手(引退)のようになりたい」と明確化されてきた。
壱岐少年サッカークラブの山田武範監督は「全日本代表入りを明確に目指している選手たちの中で練習したことで、確実に意識に変化が見られる。壱岐は中学にサッカー部がなく、香椎はソフトボール部の練習をしながらサッカーをしている環境。それでもエリートプログラムに選ばれたのは本当にすごいこと。離島でも努力すれば全国的に認めてもらえることをみんなに示したという意味で、その影響は計り知れない」と他のスポーツや文化活動をする壱岐の子どもたちにも大きな夢を与える、今回の選抜だったことを強調した。