市議会定例会9月会議の一般質問で、白川博一市長が小中学校の給食費無料化などの子育てに関する大胆な施策を行う考えを披露した。「子育て日本一の島・壱岐」をアピールして人口減少に歯止めをかける効果が望めるし、来年4月に迫った市長選での公約の柱にもなりそうだ。
給食費だけでも市一般会計から年間1億1千万円の支出は確かに大きい。市民の反応も必ずしも賛成ばかりではないだろう。全国では50以上の自治体で完全・一部無料化を導入しているが、導入までには「食べ物のお金は家庭で払うべき」「財源がなくなり、いずれ給食の質が落ちるのではないか」「子どもたちが食べ物に対して大切に思う気持ちが薄れる」などの反対、慎重意見が噴出した自治体もあった。
実現すれば県内では初めてだが、南島原市は藤原米幸氏が給食費無料化を公約に平成22年市長選に当選したものの、収賄罪に問われて逮捕。辞職し、頓挫した苦い過去もあった。
一方で、確かな成功例もある。23年度から無料化を実施した兵庫県相生市は、幼稚園から中学校まで約2500人の給食費1億1千万円を、市が全額負担している。同市は昭和49年に4万2千人だった人口が、平成22年には3万1千人まで減少。15歳未満が占める割合は11・6%で、県内最低レベルだった。だが無料効果はすぐに現れて、25年度は転入者数が8年ぶりに転出者数を上回った。
同市の取り組みで特に目を引くのが、この学校給食を250円で地域のお年寄りに提供していることだ。高齢者の孤立化を防ぐため交流の場を設け、高齢者と子どもたちの交流にも役立っている。高齢者のランチルームは児童数減少による空き教室を活用。2年間で延べ1万人が利用している。
相生市と壱岐市は、人口や高齢化率などで似たような規模にある。離島との違いはあるものの、参考になる面も多いはずだ。地産地消の素晴らしい壱岐市の給食を活かした独自の施策で、給食費無料化がその1億1千万円以上の効果をもたらすことに期待したい。