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マグロ漁を2か月間自主規制 壱岐・対馬漁師が資源確保に決断

壱岐市マグロ資源を考える会(中村稔会長、314人)、対馬市曳縄漁業連絡協議会、対馬マグロ船団の3者は5月30日、七里ヶ曽根周辺海域を利用する壱岐市と対馬市のマグロ一本釣り漁師全員が、6月1日から7月31日までの2か月間、自主的に30㌔以上のマグロ成魚漁を禁漁すると発表した。壱岐で約4百人、対馬で約6百人が、マグロ資源確保のため意思統一し、産卵期の禁漁を決めた。禁漁対象期間は3か年。マグロ漁の自主禁漁は全国で初めての試みとなる。同会はこの自主禁漁により、産卵期の親マグロの資源確保と同時に、産卵期・産卵場における成魚の漁獲制限・禁漁を拒む水産庁などに対して、現場の危機的状況を示す意図もある。
3者は文書で「両市の協議の末、太平洋クロマグロ30㎏以上の産卵親魚に付きましても『禁漁』を行う自主規制を強化することを全国に先駆けて実施します」
「背景としては、近年の資源量減少による漁獲量減少の現実を鑑みると、国による未成魚の漁獲量の50%削減だけでは不十分と判断しました」
「壱岐市・対馬市の漁業者が持続的に太平洋クロマグロの1本釣り漁業で生活を続けていくためには、微力ながら資源回復の努力を示す必要があるとのことで合意を得るに至りました」と発表した。
苦渋の選択だった。6~8月の産卵期を迎えて、日本海の産卵場へ向かうクロマグロの成魚の群れが、この時期に壱岐水道、対馬海峡付近を回遊する。壱岐のマグロ漁師の中には、6月だけで2~300万円の漁獲高を記録する人もいる。その期間の全面禁漁はマグロ漁師にとって死活問題となりかねない。壱岐・対馬の漁師だけが禁漁しても、そのマグロは他の地区の漁師に漁獲され、資源確保には直接はつながらない恐れもある。それでも将来の資源回復へ向けて、動かざるを得なかった。
勝本町漁協における総漁獲量は、平成17年度に358㌧を記録したが、その後は右肩下がりで、24年度145㌧、25年度67㌧、26年度は23㌧にまで減少。総売り上げも17年度の10・4億円から26年度は0・8億円に激減している。
壱岐市マグロ資源を考える会はこれまで、全国の漁業関係者と意見交換、適正な資源管理を求めて国会議員への陳情、農水大臣・水産庁長官に対しての要望書提出、各種会議への出席、テレビ・新聞の取材対応など積極的な活動を続けてきたが、産卵期・産卵場における漁獲制限・禁漁は実現しなかった。
同会広報担当の尾形一成さんは「水産庁が考える資源回復に向けた施策と漁師たちが海に出て肌で感じる実感には、あまりにもギャップがあり過ぎる。早急な規制強化を要望している」と話した。
7月末までの2か月間、マグロ漁師はイカ釣りなどで生計を支えていかなければならない。尾形さんは「イカ釣りをやるのは5年ぶり。中村会長は20年ぶりだと言っていた。素人が簡単にできるものではなく、燃料代を賄うのがやっとの状況です」と慣れない漁に苦心しながらも、子、孫の代まで壱岐のマグロ漁を続けていくために、禁漁に必死で耐えていく。

 

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