本市など国境に接した全国離島の悲願だった「有人国境離島地域の保全及び特定有人国境離島地域に係る地域社会の維持に関する特別措置法案」(通称・国境離島新法案)が20日、参院本会議で可決・成立した。新法では、国境離島の無人化を防ぐため、環境整備が必要な離島を国が指定し財源を措置する。新法は10年間の時限立法として来年度施行される。今後は新法に基づく予算の獲得が大きな課題となる。
指定された特定地域は8都道県15地域の計71島。本県は壱岐、対馬、五島列島の3地域7市町の計40島で、壱岐地域は壱岐島、大島、原島、長島、若宮島の5島。現在ある離島振興法の対象は全国139市町村258島だが、国境離島新法は「人口減少が著しい国境に接した離島」という条件により、指定はその3分の1以下となったことで、より手厚い支援策が期待されている。
本市では昨年5月9日に壱岐市国境離島新法制定期成会(川﨑裕司会長)らが総決起大会を開き、議員立法による法案提出を目指していた自民党離島振興特別委員長の谷川弥一衆院議員、前特別委員長の金子原二郎参院議員とともに、参加した1300人が制定へ向けて「頑張ろうコール」を行うなど、機運を盛り上げてきた。その熱い思いが実った。
長崎県内の離島でも人口流出に歯止めがかからない状態が続いており、2015年国勢調査結果(速報)では10年調査と比べて離島地域(本市など5市町)の人口減少率は8・6%で、県内本土の2・9%を大きく上回った。本市も10年の2万9377人から7・7%減少の2万7106人となっている。
また中国などの海洋進出もあり、国境海域の有人離島を領海、排他的経済水域を維持する拠点と位置付け、無人化を防ぐために、谷川議員らが議員立法で提案した。
参院本会議の採決を傍聴した全国離島振興協議会長を務める白川博一市長は「この法律は、航路航空路運賃の低廉化、輸送コストの低廉化、漁船燃油の低廉化、雇用の確保の4本柱で構成され、まさに壱岐市活性化の大きな後ろ盾となる。今後は執行するために必要な予算が十分に確保されるよう全力で取り組み、壱岐市の振興発展と市民の暮らし向上につなげていく」と成立の喜びを語った。
平成29年度の概算要求は8月末までに閣議で了解されるため、5月には新法に基づく予算要求をまとめる必要がある。目標となる「100億円」の予算獲得のためには、実効性のある具体的施策や斬新なアイデアの提案が必要となる。