社説

見習いたい海士町の取り組み

syasetsu 「地方創生のお手本」としてよく取り上げられる隠岐・海士町。先日もテレビ番組でその取り組みが紹介されていたが、改めてその斬新さに驚いた。
なかでも「ナマコ加工工場」は、Iターンで転入してきた若者が起業する際に、町が施設を建設してこの若者に貸与した。よそ者1人の起業に町が大きな支援をするなど、他の自治体なら「何で、そんなことに町の金を使わなくてはいけないのだ」と議会で猛反対されることだろう。だがこのナマコビジネスが年間2千万円程度の売り上げとなり、島の漁師の生活を支える存在になりつつある。
島の高校は1学年30人を下回り、本土の高校に併合されるピンチを迎えていたが、大手企業で人材育成を担当していたIターン者が「島留学」を提案。都会の子どもたちに島の環境の中で学ぶことの大切さを説いて、毎年10~20人k学生が入学するようになり、廃校のピンチを脱した。
2013年度の入学者は45人で、このうち22人が島外からの留学生で占められた。彼らの多くが進んだのが難関大学を目指す「特別進学コース」で、元一流企業勤務者や有名大学出身のIターン者を講師にした町営学習塾も開講して、学力アップに取り組んでいる。
この22人は精一杯集めた人数ではない。東京や大阪での説明会には2百人以上が集まっていたが、受け入れ施設の限界があるため22人に絞ったもの。施設が整えば、さらに生徒数増加が見込めるほど、この島の高校は魅力的に映っているのだ。
これまで海士町に集まったIターン者は、約250世帯、4百人。このうち20~30歳代の働き盛りが70人を占めている。60年前に7千人いた島民がいまは2400人、65歳以上が4割を占めているので、まだまだ町のピンチを続いているが、着実に変わりつつあることが実感されている。
同じことを壱岐で行おうとした場合、果たして市や市議会は、海士町のような前向きな取り組みを行うことができるだろうか。地方創生で問われているのは、その自治体の決断力だろう。

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