市文化財展示施設再編計画第1回検討委員会がこのほど開かれ、新・松永安左エ門記念館(仮称)の建設基本計画の審議が始まった。現在の記念館は1971年開館ですでに53年が経過し老朽化が目立つ。展示スペースも限られているため、十分な展示や解説ができていない状況だった。入館者数も平成28年度には年間6千人以上あったものが、令和2年度以降は2千人台まで落ち込んでおり、1日当たりの平均来館者数は10人以下だった。
「電力王」「電力の鬼」と呼ばれた松永翁は間違いなく郷土の偉人であり、その功績を後世に語り継ぎ、本市を訪れる観光客にも紹介していくことには大きな意義がある。だが1日10人も足を運ばない施設のまま運営していくことは、松永翁に対して失礼なことでもあり、建て替えは大いに賛成したい。
だが、市から検討委員会に提案された基本計画案を聞いて、まったくワクワクしなかった。費用についてはまだ提案されていないものの、せっかく建て替えるのに新設されるのはライブラリ、講座室、収蔵庫などに限られ、あまり目新しさが感じられない。計画案では入場料を現行の大人100円から400円に値上げして収益の改善を考えているが、年間来館者数の目標は7千人であり、目標を達成したとしても1日の収入は1万円程度。職員は5人(館長、学芸員各1人、事務員3人)を想定しているので、黒字化は到底不可能となる。
山口千樹教育長は「公的な博物館などの黒字運営は難しい」と答えていたが、建て替えをしてまで整備するのであれば、将来的に黒字化が望める施設にすることを考えるべきではないだろうか。例えば、松永翁に直接関係がない展示でも、「電力」に焦点を当てれば、チームラボのようなデジタルアートの世界や、光の芸術・マジックなど集客が望める施設は考えられる。本市自慢の太陽光発電・水素蓄電の組み合わせて、使い放題の電気で様々なアトラクションを考えてみてはどうだろうか。