一支国博物館の第46回特別企画展「山本二三展~長崎・五島が生んだアニメーション美術監督~」が20日に開幕した。9月16日まで、観覧料は一般5百円、小中高生3百円。宮崎駿監督のアニメーション映画の数々で美術監督を務め、日本アニメ界の第一線で活躍する山本二三さん(66)が手掛けた作品の原画や複製画、故郷・五島の風景を描いた「五島百景」、愛用の画材など約60点を公開。また今回の壱岐での展示会を記念したオリジナル作品「壱岐の夏、乙島の灯台」も公開されている。
会場の1階テーマ展示室にズラリと並べられた「火垂るの墓」「もののけ姫」「耳をすませば」「天空の城ラピュタ」などジブリ作品の背景、イメージボード(アイデアスケッチ)、ポスターなどの原画や複製画の展示に、来場者は目を輝かせた。作品の1つ1つには、その作品ができた経緯やエピソードなどが説明されており、その背景画が使われたシーンができるまでの工程や、美術監督がたった1シーンのために費やしている労力の膨大さなど、作品の裏側を知ることができる。
須藤正人館長は「世界中の誰もが知る日本の動画制作の中でも、山本さんはその第一線を支えている人。その山本さんの作品展示会を壱岐でできるのは奇跡だと思っている。アニメーションの美術監督とはどのような仕事なのか、という点も、この展示から興味を持ってもらえたら嬉しい」と話した。
山本さんは展示会開会を前に来島し、19日のプレス内覧会、20日のオープニングセレモニー、21日の制作実演で自ら作品について1点1点丁寧に説明し、市民と触れ合った。「同じ長崎の離島である福江島の出身だが、壱岐に来たのは今年5月が初めてだった。海の色や香りは五島によく似ていて、懐かしさが込み上げてきた。砂の色が五島より少し黄色っぽかったことも興味深かったし、壱岐ならではの歴史や文化など様々な魅力を感じることができた」と壱岐の印象を語った。
展示の目玉の1つとなっているのが、初来島した5月に制作した壱岐の風景画「壱岐の夏、乙島の灯台」。「原の辻遺跡、猿岩、聖母宮など壱岐のいろいろな場所を制作のために取材したが、壱岐に向かう飛行機の窓から見えた乙島の灯台の風景が、一番印象に残ったので、題材に決めた。ポスターカラーは空の色に5色、海の色にも5色、岩礁に4色を使い、私の大好きな夏の雲を付け加えた。取材した5月とは草の色も違うし、雲もなかったが、私の想像の世界を描きました」。「二三雲」と呼ばれる雲の描写は映画「時をかける少女」などで有名だが、その雲と壱岐の風景のコラボは、画家の作品とは違った美術監督らしい想像力にもあふれたものになった。
博物館2階には、「もののけ姫」のシシ神の森の大型写真パネルが設置され、神秘の森の中にいるような写真を撮影することができる。また1階エントランスではこの「壱岐の夏、乙島の灯台」をはじめとした作品のポストカードやオリジナル商品を販売するブースが設置されている。