「子育ての島・壱岐」の充実に、保護者たちが立ち上がった。市内子育てサークルの「おひさま」「さくらんぼ」「たんぽぽの会」「笑(えみ)」の4団体が12月25日、白川博一市長に対して「壱岐こどもセンター支援事業の改善と充実に関する要望書」を提出した。壱岐こどもセンター(郷ノ浦町)は子育て支援の拠点施設となっているが、職員不足のため昨年4月以降、複数の事業が休止、一時休止となり、特に療育に子どもを通わせている保護者にとっては深刻な問題が発生していることから、白川市長に対して職員の配置などに関して要望した。
壱岐こどもセンターでは、昨年4月からセンターの利用が「未就園児童まで」から「3歳まで」に変更、「あそび場・交流の場」の開放時間が1時間短縮、毎週木曜に石田スポーツセンターで実施していた「いしだ広場」が中止、さらに昨年7~8月には「療育」(発達障害などを持つ子どもに対する教育)がたびたび休止となり、9月からは子育て応援講座「いきっこ広場」も中止になった。この事態に不安を感じている子育てサークル4団体を代表して、「笑」の吉永里枝代表ら3人が、鵜瀬和博市議、植村圭司市議とともに市役所郷ノ浦庁舎を訪れ、白川市長、眞鍋陽晃副市長、久間博喜総務部長、原田憲一郎市民部長らと面談。要望書提出と意見交換を行った。
要望書では「子育てをする保護者にとって、島内唯一の壱岐こどもセンターの療育・子育て支援事業は必要不可欠で、その手厚いサポートで子どもたちの成長が目に見えて分かる。だが療育がたびたび休止されるとリズムが崩れ、パニックになる子どももいる。いきっこ広場やお遊び教室は、子どもたちのためだけでなく、保護者同士の出会いの場、情報共有の場でもあり、育児の不安を取り除いてくれている。特に島外から嫁いできた母親や転勤族の保護者は知り合いも少なく、貴重な場所になっており、中止・休止の影響は大きい」とこどもセンター事業の意義を強調。4団体が保護者482人を対象に行ったアンケートで、290人が「子どもセンターの事業に参加したことがある」と回答。このうち、子どもセンターの事業がなくなると「とても困る」が137人、「困る」が84人、「少し困る」が31人だったことなどを示した。その上で、①療育支援事業と子育て支援事業の安定的継続、②作業療法士や言語聴覚士などの資格保有者、正職員の適正配置、③ワンステップ事業の改善と充実、④休止中子育て支援事業サービスの早期再開、⑤子育て世代と(市との)定期的な意見交換の場の設置、の5項目を要望した。
吉永代表は「壱岐が他の自治体に比べて充実した、恵まれた子育て環境にあることは理解しており、感謝している。だが発達障害がある児童を持つ保護者らにとって、こどもセンターの療育、子育て支援事業はよりどころになっている。休止になることが子ども、保護者にとって大きな不安になっていることを知ってもらいたい。以前のこどもセンターは本当に素晴らしかった。子育ての島・壱岐へ向けて、保護者、子どもたちが安心できる環境整備をお願いしたい」と涙ながらに訴えた。白川市長は「できる限りの対応をさせてもらう。作業療法士は正職員で募集しており、人員確保に最大限の努力をしていく。だが保育士は壱岐全体で足りておらず、いつも募集しているがなかなか応募がない状況だ。待遇改善も、全員を正職員にすることはできない。ワンステップ窓口は、担当課が郷ノ浦と芦辺に分かれており、一緒になるのが望ましいが、郷ノ浦庁舎にスペースがない。だが電話は掛け直さなくてもすぐに回すことができる。意見交換の場には、時間が合えば私も出席する。12月会議で自治基本条例が可決したので、地域からの発案を市が全力でサポートしていく」などと答えた。
市議会12月会議の一般質問では、作業療法士、言語聴覚士、臨床心理士などセラピストを地域おこし協力隊で募集する案が提示された。また鵜瀬議員は「こどもセンター運営にかかる費用をふるさと納税の使い道に加えてはどうか。『子育ての島・壱岐』の環境整備をすることで移住促進にもつながる」と提案しており、保護者らの積極的な動きが新たな壱岐島の在り方につながるかもしれない。