6日に成立した改正水道法で水道事業運営の民間委託が促進されることになった。その賛否についてテレビのニュース、ワイドショーで取り沙汰されているが、長崎県内の自治体で運営そのものを民営化しようという動きは皆無だという。それはそうだろう。民間企業が収益は上がる見込みのない事業に進出するはずがない。人口10万人が損益分岐点と言われているが、県内で10万人を超えるのは長崎、佐世保、諫早だけ。村落が分散している地方都市では、配管管理などに費用を要することもあり、なおさら民間の参入は考えにくい。
水道はライフラインの中でも最も重要な役割を果たしている。北海道では外国資本が水源のある土地を買収しており、今後の事態に不安を抱かせている。国境離島の水源はなおさら重要な意味を持つだけに、水道事業は国、自治体が責任を持って行うべきだ。だがもし水道事業の一部でも民間委託をする場合は、徹底的な情報公開を行わなければならない。現在の指定管理者選定委員会のように「企業の秘匿情報に関わる」とか「委員の個人情報を保護する必要がある」などといってすべての情報公開を行うことができない規定では、市民のライフラインを安心して託すことはできない。
現在開会中の市議会定例会12月会議で、市自治基本条例を制定する議案が上程された。市民を主体としたまちづくりの実現を図ることが大きな目的で、市民は「自らのまちは自らの手でつくる」という意識を強く持ち、市民と行政が協働でまちづくりを積極的に進めていくことが基本理念となっている。その考え方は間違っていないと思うが、その条例の基本には「情報公開」がセットになっている。市の持つ情報をできる限り市民に判りやすい形で公開しなければ、「協働」を行うことは不可能だ。水道だけでなく、交通、通信、医療・介護、健康保険など市の重要施策は、市民への情報公開が進まなければ施策も進展しないと思われる。