インバウンド(inbound)という言葉を、観光分野で聞く機会が増えている。インバウンドとは「外国人旅行者を自国へ誘致することの意」で、日本においては海外から来る観光客を指す。
対馬は韓国人来島者が多く、過疎といわれた地方に新たな活況が生まれている、インバウンドの身近な成功事例である。釜山からは1万円弱の日帰りツアーもあり、高速船で2時間程度であることから、韓国からの観光客は増え続け、昨年は約15万人が訪れた。異国情緒が手軽に味わえることがウケているのだという。
しかし、いいことばかりではない。韓国人釣り客が、禁止されている「まき餌」をすることによる漁業関係者とのトラブルなど、異国の人々を受け入れるのにはいろいろな問題点が表面化している。それでも島の活性化のため、対馬市は状況打開に知恵を絞り、を対馬全体で約160の店や観光スポット、グルメ情報を紹介する、スマートフォン用韓国語アプリの開発なども進めているのだ。
5月、壱岐市観光連盟は台湾からの団体旅行者を誘致しようと、「台湾モニターツアー」を行い、長島会長は「このツアーをきっかけに団体客に来てもらいたい」と期待を寄せた。9月には市が中国週刊誌の撮影隊を福岡市と連携したインバウンド事業で招致し、白川市長は「福岡市の商品の一部を壱岐市に組み込むルートが確立されれば、観光客拡大につながる」と積極的な姿勢を見せた。
壱岐はどの国の観光客を誘致したいのだろうか。
観光の魅力において、中国は「温泉・ショッピング・グルメ・富士山や桜、雪景色などの自然景観」を挙げ、フランスでは「四季折々の魅力や洗練された伝統文化。個人旅行が楽しめる良質なサービス」を求めている。また、富裕層をターゲットにするのかしないのかでも、インバウンドの対応は違ってくるはずだ。
人口が減り続ける壱岐島において、インバウンドでの外国人誘致は必須だろう。しかし、やみくもにいろいろな国を招致、宣伝しても、その国や客層の志向にあった「おもてなし」でなければ、壱岐のインバウンドも中途半端になりかねない。
壱岐市全体で方向性が欲しい。