社説

横文字多用は能力の欠如。

安倍晋三首相がトランプ米大統領と会談し、2国間によるTAG(物品貿易協定)の締結に向け新たな通商交渉に入ることで合意したというニュースがあった。TAGとは「トレード・アグリーメント・オン・グッズ」の略で、「サービスや投資のルールなどを含むFTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)とは違う」と政府は説明している。だが内容を見ると、TAGもFTAの一部。「米国とのFTA締結は反対」という声に対して「これはTAGなので、FTAではない。安心してください」と言っているかのような、都合の良い新語の使い方に見える。

この問題に限らず、最近はやたらのアルファベットや横文字の説明が目立つ。経済やIT関連には特に多い。若い世代には抵抗が少ないのかもしれないが、そのような学習をしてこなかった高齢者世代には、まるで暗号のように見えてしまう。「日本語に当てはまる言葉がない」「日本語にすると長くなる」ことが横文字多用の理由だそうだが、適切な日本語を使える能力に欠如しているのでは、と思ってしまうこともある。

6月15日に選定された「SDGs未来都市」「自治体SDGsモデル事業」の計画書が作成され、このほど市ホームページで公表された。このような情報を積極的に市民らに公開する姿勢は高く評価する。だがせっかく公開をするのなら、国に提出した計画書だけでなく、市民が理解できるような説明を加えなければ「公開」の意味は薄れる。SDGsという言葉そのものの理解も難しいが、タイトルに入っている「Society5・0」、今後取り組む課題では「ステークホルダーとの連携」「強固なバリューチェーンを目指す」「レジリエンスな経済の構築」など、一般市民には意味不明な言葉が並んでいる。

市民に正しく知らせるためには「義務教育レベルの学力で理解できる文章」が開かれた行政の基本であることを、市には自覚してもらいたい。

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