市議会定例会9月会議は9月25日、決算特別委員会(久保田恒憲委員長)を開いた。委員会の中で多くの時間が割かれたのが野犬問題だった。この問題については、一般質問でもほぼ毎年1回は取り上げられており、決算委でも昨年に続いての質問となった。委員からは捕獲頭数、捕獲方法、業者の選定、委託料などについて質問があったが、市執行部も根本的な解決策を見い出せない状況が続いている。狂犬病予防など衛生面、子どもたちの安全安心な通学、観光地としてのイメージの上でも大きな問題となっており、県と市の本腰を入れた取り組みが望まれる。
山内豊委員は平成29年度決算で456万円の野犬捕獲委託料の内容について質問した。市環境衛生課は、同年度の捕獲頭数は105頭で、このうち104頭は箱わな式捕獲機による捕獲で、1頭は睡眠薬を混入した餌による捕獲であること、委託先の公募には毎年1社しか応募がなく、その業者と契約していると説明した。
平成28年12月会議の一般質問で白川博一市長は「捕獲機は常時30基を設置しているが、野犬は捕獲機に対して警戒心が強く、捕獲が困難な状況だ。保健所とも協議を重ね、睡眠剤の使用が可能な場所では1週間程度餌付けした後に、保健所の獣医師の指導の下、捕獲に取り組んでいる」と回答していた。だが切り札と期待された睡眠薬による捕獲も、29年度は「2度実施して、8月に旧那賀中学校近くで実施した時は、1週間の餌付け後に睡眠薬入りの餌を与えたが、効果のある食後20~30分後には逃げてしまい、翌朝にフラフラしている1匹を捕獲した」「1月に郷ノ浦町東触で実施した時には、睡眠薬を入れるはずの1週間後が雨天でできなかった」などと担当部局は説明。苦慮している状況が明らかになった。
赤木貴尚委員は「毎年捕獲を続けていても、野犬が減っている実感がない。むしろ増えているのではないか。知り合いの小学生が野犬がいて家に帰れない、と困っていたことがあった。平成20年から同一業者に委託して、23年から毎年456万円の同額の委託料だが、成果を求めるべきではないか」と問題提起した。山内委員も「ウルトラマラソンのランナーに事故が起こっては大変だ」と心配した。担当部局は「委託料は点検などのため1日150㌔の燃料費と2人分の人件費、餌代から決定している。業者は捕獲だけでなく、道路上などの死がいの運搬も行っている」と委託料に理解を求めた。
捕獲された犬の処分をすべて管理している壱岐保健所によると、27~29年の捕獲頭数は27年76頭(県1、市75)、28年69(県0、市69)、29年51頭(県4、市47)となっている。市の発表とは頭数が異なるが、これは県の数字は狂犬病予防法に基づく統計であり、生後90日以下の子犬は捕獲したものであっても「引き取り」に分類しているためだ。引き取り数は28年110(成犬5、子犬105)、29年98(成犬10、子犬88)となっている。このデータによると、市の29年度捕獲頭数105頭のうち成犬は47頭、子犬は58頭で、半数以上は子犬だったことになる。
赤木委員は議会後に「野犬を減少させるためには、業者に対して成犬捕獲の成果報酬制度を取り入れるべきではないか。業者にとってもその方がモチベーションが高まるはずだ。同時に、平成25年度まで市が実施していた避妊・去勢手術助成事業の復活も求めていく」と問題解決のため今後も議会で取り上げていく方針を語った。