JA壱岐市の定例8月子牛市が1、2日の2日間、芦辺町の家畜市場で開かれ、平均価格は80万4013円で、前回の6月市場と比較して95・32%、約4万円下落した。歴代最高だった4月市場からは一気に約10万円の下落となった。
取引頭数は660頭(牝294、去勢366)で、平均価格は牝が71万93円(前回76万9586円)、去勢が87万9456円(同90万4600円)で、特に牝の価格下落が目立った。
その中で強烈な異彩を放ったのが初日に登場した「すみれ」(牝、父金太郎3、母ひかる2、母の父金幸=石田・吉永巨樹さん生産)が200万1千円で落札されたシーンだった。子牛の落札価格が200万円を超えたのは、去勢も含めて壱岐家畜市場では初めてのことだった。
落札者は地元の若手肥育者で組織する壱州枝肉研究会だった。繁殖素牛(繁殖牛として育成する前の子牛)として高く評価された。
「すみれ」の父はいまや長崎県のエース種雄牛となっている壱岐産の「金太郎3」。「すみれ」はET産子(受精卵移植による生産牛)で、代理母の「ひかる2」は鹿児島県の名種雄牛「金幸」の産子という優秀な血統。代理母牛の繁殖成績が素晴らしく、期待育種価(枝肉重量・ロース芯面積・バラの厚さ・皮下脂肪厚・歩留基準値・脂肪交雑)が「AAACAA」と極めて高いこと、「すみれ」の発育、体型、健康度合いなどが素晴らしかったことが、200万円の高額につながった。市場関係者によると、牝の子牛が200万円で取引されたことは壱岐では初めてだが、他県の市場では過去に数例あるという。
市場内には、9月7日から宮城県で開催される第11回全国和牛能力共進会に県代表として出品される「種牛の部」の第3区「かねはる」(勝本・山石吉彦さん飼養)、「肥育の部」の第7区「平国金太」(郷ノ浦・野元牧場飼養)、第9区「花北福」(JA肥育センター飼養)を応援する懸垂幕が掲げられ、壱岐産牛の優秀さを購買者に示していた。平均価格は2市場続けて下落しているが、「すみれ」が示したように壱岐産牛の能力は全国に知られるようになってきており、今後の価格巻き返しが期待される。