壱岐署(中嶋欽也署長)は5日、高齢者が安全で安心して暮らすことができる壱岐市の実現を目指すため、一般社団法人壱岐医師会、壱岐市歯科医師会、壱岐市薬剤師会と「高齢社会総合対策壱岐市医療機関ネットワークに関する協定」を締結した。警察と医療機関が高齢者対策を目的に協定を結ぶのは県内初。医療3会との協定は「調べた範囲では全国的にも例がない」(中嶋署長)異例の取り組みとなる。
締結式は中嶋署長、壱岐医師会・江田邦夫会長、歯科医師会・赤木昭彦会長、薬剤師会・立石忠裕会長が協定書に署名・調印した。
【協定の内容】高齢者が安全で安心して暮らせるようにするため、以下の活動を推進する。
①振り込め詐欺をはじめとする特殊詐欺等の犯罪被害未然防止
②交通事故(加害・被害)防止
③災害被害対策
④地域見守り活動
⑤その他、高齢者が安全で安心して暮らせる地域社会づくり
同署は「長崎県の平成26年高齢化率は28%で、全国(25・1%)よりも高いが、壱岐市は34%とさらに高くなっている。25年後には人口が1万人減少し、高齢化率は40%に達すると推測されている。本格的な高齢化社会の到来に備えて、高齢者のよりどころである医療機関とネットワークを構築して、官民一体となった対策、支援が必要になる」と締結の意義を説明した。
市内で平成23~26年に刑法犯事件が587件発生しており、このうち119件の被害者が65歳以上の高齢者。また検挙者数181人のうち39人が高齢者で、その比率はともに20%を超えている。
壱岐署は今年度、時津、松浦署とともに高齢社会対策推進モデル警察署に指定されたのをきっかけに、壱岐市と「市高齢社会総合対策ネットワーク」を締結し、両者が情報を共有して高齢者対策に取り組んでいる。また高齢社会総合対策重点推進地区に、独居高齢者世帯が23・8%と市平均の18・1%を大きく超えている志原地区を指定し、警察・市・推進委員の連携を強化している。
今回はそれに医療機関が加わる形で、より緊密なネットワークを形成する。中嶋署長は「例えば、高齢者が行方不明になった場合、その人に認知症や徘徊癖などの病歴があることが判れば、初動捜査を行いやすくなる。また病院には高齢者が多く訪れ、様々な情報交換も行われている。高齢者の相談を受けている医師も多い。病院や薬局に特殊詐欺に関してのポスターを貼ったり、チラシを配布するなど周知活動や、警察官が立ち寄るなど、様々な協力態勢を組むことができる」とネットワークによる効果に期待している。
江田会長も「警察が事件事故に関する業務だけでなく、地域の安全安心に積極的にも取り組んでいただけるのは大変にありがたいこと。健康食品に関する詐欺まがいの話など患者さんからよく聞くので、警察に情報提供を行うなど全面的に協力する。このような連携は全国でも例がないので、高齢化社会を迎える日本の突破口になることを期待している」と全国的なモデルケースになることを目指し連携を深めていく。