市議会の庁舎建設検討特別委員会(市山繁委員長)の第2回会合が25日、一般公開で行われ、白川博一市長が「庁舎建設検討委員会(菊森淳文会長)の答申を尊重し、新市庁舎を建設すべきと判断した」と市の方針を初めて正式表明した。市が実施したアンケートでは建設反対が65%を占めたが「反対理由には十分に(不安がないと)答えられると判断した」と結果を覆した。今後、各種問題について庁舎建設検討特別委の中で議論を続け、今年中に議会として建設の可否を判断する。
これまでも「庁舎建設検討委員会の答申(の経緯)を尊重する」とは語っていた白川市長だったが、市としての正式な態度は「市民の意見を十分にお聞きしてから」と表明を保留していた。だが特別委から「市の構想がはっきりしないと、具体的な議論ができない」との申し入れがあり、この日の表明となった。
市長は「現庁舎の耐震補修を行うと3・5億円と試算されるが、それだけでは耐用年数を伸ばすことはできない。長寿命化工事を行えば16・5億円、さらにバリアフリー化、省エネ化、防災拠点としての整備などを加えると新庁舎建設と変わらない費用になる」「合併特例債を活用すれば、答申のもっとも高い建設費を想定しても、15年間で実質9億4231万円の償還で、年間の返済額は最大7700万円。次代に借金を残すというほどではない」と財政面の要因などから「壱岐市の将来を考えると、市民主体の町づくりの拠点として、答申通りに市庁舎を建設すべきだと総合的に判断した」と明言した。
また「市としての判断は示したが、議会の賛同が得られなければ建設はできない。市庁舎建設は壱岐市百年の大計であり、特別委で慎重な協議をお願いしたい」と市議会に判断を仰ぎ、「仮に建設が決まると、次に場所の問題が出てくるが、決して(地域同士の)綱引きなどは行わず、次の世代の壱岐市を担う人たちにいかにより良い庁舎を残すかという観点で論じてもらいたい」と市民に要望した。
だが、この日は同時に、市が7月に市内全世帯を対象に実施した市庁舎建設に関するアンケートの結果も発表されたことで、特別委での市長答弁はやや苦しいものとなった。
アンケートは1万1586世帯に配布し、1920世帯から回収されて、回収率は16・8%。世帯から複数の回答があったため回答数は2821で、「建設した方が良い」が851(30・2%)だったのに対し、「建設しない方が良い」は1813(64・3%)、「どちらでもない」157(5・5%)と、寄せられた市民からの回答は「建設NO!!」だった。
この結果について市長は「回収率は低かったものの、多くの貴重な意見をいただいた。建設しない方が良い、と答えた人の意見は、財政面での不安が大きなウエートを占めていた。その市民の不安は、きちんと説明することでクリアできると判断した」と決断の経緯を語った。
議員からの質疑では「新庁舎の規模、旧4庁舎の活用をどうするのかを明確にしてもらわないと、議論がしにくい」「この時期にアンケートで建設賛成、反対を問うた意味はあったのか」「市民への説明が十分だったら回収率はもっと高かったはずだ」など厳しい指摘が相次いだ。
市庁舎建設問題は今後、市議会を舞台に財政面、防災面、市民サービス面などテーマごとに議論を重ね、今年中に建設の賛否を判断するが、アンケート結果、市民の声を聴く会で出された意見は建設に対して逆風が強かっただけに、紆余曲折がありそうだ。