「真似をする」。字面だけを捉えると、あまり良い印象ではないかもしれないが、人間の学習の99%以上は、真似をすることで成り立っている。
野球少年は、憧れのプロ野球の真似をすることで技術を上達させて、その憧れの存在に並んだか、近づいたかという時点で、ようやく自分のオリジナリティを開発していく。勉強というものもこれまでの偉大な人たちの業績を学ぶことであり、現在に至るまでの完璧な「真似」ができてこそ、進化へ結びつく。
原の辻が栄えた弥生時代のような情報量ならともかく、現在はあらゆる情報を分析し、その中で良いものを選択して「真似」をして、新しい技術へと結び付けていくことができる、恵まれた環境にある。
「新しいアイデアを募集しています」。「市民の考えを教えてください」。自治体がよく使うフレーズだ。だが突発的に新しいアイデアや斬新な考え方が浮かんでくるはずもない。その分野に対しての知識がそれほどない一般市民なら、なおさらのことである。地方自治体がこれまでにはない新しい、まったく独自のプランで、様々な問題を乗り越えていくことができる確率は、限りなく0に近い。
先日、新藤総務大臣が壱岐を訪れた。総務省の肝いりでスタートした「地域おこし協力隊」事業の進捗状況をリサーチすることも大きな目的のひとつで、3人の隊員の活躍ぶり、意識の高さに感服していた。
だが壱岐市の協力隊員の受け入れ態勢は、必ずしも順調だとは言えない。残念ながら“よそ者”に対しての排他的な考えを持つ人がいるためだ。09年度から始まった同制度は13年度、全国318自治体で978人もの隊員が活躍している。そのなかで成功している自治体の「真似」、失敗している自治体の「反面教師」を行っているのだろうか。
情報化時代を迎え、あらゆる情報の入手が容易になってきた。まずは「成功」の真似と、「失敗」の反面教師を徹底的に行うことが、「開発」「進化」につながるはずだ。