3月23日に再稼動したばかりの玄海原子力発電所3号機で、発電タービンを回すための配管から蒸気漏れが、同30日午後7時ごろに見つかった。九州電力は同25日から再開していた発電と送電を停止し(原子炉は稼働中)、配管の点検をしたところ、直径約1㌢の穴が開いているのを発見した。配管は格納容器の外にあり、九電は「放射性物質の飛散はない」と発表したが、発電を停止した状態で補修を行うため、4月24日に予定していた営業運転移行は遅れる見通し。また5月に予定していた4号機の再稼動も遅れる可能性がある。
九電は3月30日夜、同社のホームページで「玄海原発3号機で2次系の空気抜き管から微少な蒸気漏れを確認した。電気出力75%から負荷降下を行い発電を停止し、念のため点検を行うこととした。本事象による環境への放射能の影響はない。本社は引き続き安全確保を最優先に、一つ一つの工程を慎重に実施していく」などという簡単な報告を掲載した。
また九電は4月2日、「点検の結果、穴が開いた金属製配管の一部に著しいサビが確認された。配管を覆っている保温材の継ぎ目から雨水が浸入して湿った状態になったことで、配管の外側が腐食し穴が開いたと考えられる」と原子力規制庁に対して説明した。九電は蒸気漏れの場所が2次系(放射性物質を含まない水などが循環)だったことなどから「法令上のトラブルにはあたらない」として、あくまでも再稼動の工程で起こった「不具合」だとしているが、周辺自治体の住民にとっては「事故」という認識が強い。
山口祥義佐賀県知事は「九電から県に連絡があったのは、蒸気漏れを確認してから2時間後の午後9時だった。もっと早く連絡が欲しい」との懸念を共同通信などに語ったという。壱岐市への九電からの連絡は、危機管理課職員への第1報のメールが30日午後10時17分、電話は午後10時28分と佐賀県よりもさらに1時間以上も遅かった。当日は長崎市へ出張中だった白川博一市長に市を通してメール連絡があったのは午後11時過ぎだった。
白川市長は2日、壱岐新聞社の取材に対して「事故前日(29日)に九電職員が来て、再稼動についての説明を受け、これまで通りに市民が不安を感じている限りは再稼動に反対であると表明した上で、再稼動は細心の注意で進めてもらうように強く要望したばかりで、(あきれて)言葉にならない。1㌢の穴というのは、圧力が高ければ『蒸気漏れ』ではなく『噴出』に思える。放射能の飛散がなかったのも、たまたま格納容器外の配管だったからではないのか。迅速で正確な報告、徹底的な原因究明と再発防止策を丁寧に説明してもらわねば、市民はさらに納得できない」と憤りを露わにした。