第94回東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝、10区間217・1㌔)が2、3日に行われ、順天堂大学の6区(3日、箱根~小田原間20・8㌔)に石田中学出身の江口智耶(3年、大牟田高)が出走。1時間0分28秒と区間10位の記録で、前区の総合8位の成績を維持した。江口は大牟田高時代に全国高校駅伝に出場。順大入学後はケガに苦しんだが、3年で初めて念願の箱根駅伝出走、しかも高校時代から「夢だった」と語っていた6区山下りで力走を見せた。沿道では壱岐から駆け付けた家族、関係者らが横断幕を掲げて応援した。
昨年4位の順大は、2日の往路で思わぬ苦戦を強いられた。2区に前年同区で8人抜きを演じ、リオ五輪三千㍍障害日本代表だったエース塩尻和也(3年)を配して万全の構えだったが、その塩尻は後半に失速して区間10位。5区山田攻(3年)が区間4位で総合8位まで巻き返したものの、トップとは5分25秒の大差、9位以下とは僅差で江口は復路のスタートを切らなければならなかった。
江口は大牟田高卒業時の本紙取材に「1年時から箱根の山下りを走るのが夢」と語っていた。ケガのためその目標は2年遅れたものの、普段の努力が認められて三大駅伝初出走ながら、勝負のキーポイントとなる6区を任された。「やっと憧れの箱根を、しかも山下りを走れるのは楽しみである一方、不安も大きかった。下りは得意だが、箱根の山下りは想像を絶するものだった」と慎重なスタートを切った。
下り部分で東海、帝京に抜かれて一時は10位まで順位を下げたが、江口は落ち着いていた。「東海、帝京の選手は山下りで実績を残している有力選手だったので、下りで追いつかれるのはある程度想定内だった。下った後の平地でいかに速く走れるか、それ以外のチームを多く抜けるかが重要だと思っていた」。その言葉通りに函嶺洞門から小田原にかけての平地で城西、日体を抜き、総合8位を維持したまま7区清水颯大(1年)にタスキを託した。「抜かれた分は何とか抜き返そうと思って走っていた」。順大はその清水が3人に抜かれ11位に落ち、ケガを克服して初出場したアンカー花沢賢人(4年)が感動的な追い上げを見せたものの、10位中央学院に14秒差及ばず、来年のシード権を逃した。
江口は「自分は8位をキープしたものの、後ろとの差が詰まり、前とは開いてしまい、流れを作ることができなかった」と反省の言葉を口にしたが、「いつもケガと戦っていた努力家の花沢さんと走れたことは嬉しかった。来年は予選会からとなったが、来年の箱根がなくなったわけではない。予選会を勝ち抜く試練を乗り越えて、さらに強みを見出せるように、日々の練習から取り組んでいきたい」と前を向いた。大会後、江口は来年度のキャプテン就任を要請された。順大は江口が中心となって、名門復活へ向けて予選会から再スタートを切る。
◆江口智耶(えぐち・ともや)順天堂大スポーツ健康科学部3年。1996年7月10日、石田町生まれ。身長169㌢、体重53㌔。大牟田高校卒業。1万㍍ベストタイムは29分43秒28。