ながさき生物多様性フォーラムin壱岐(県主催)が1日、一支国博物館で開催された。県が生物多様性の保全を図るための基本計画となる「長崎県生物多様性保全戦略」を見直すにあたり、生き物と県民の暮らしについて考えるために、県内6地区で順次実施している。
壱岐会場では、長崎大・中西弘樹名誉教授が「壱岐の植物と自然、その現状」、国立環境研究所・杉原薫特別研究員が「世界最北端のサンゴ礁とサンゴ群集」について講演。その後、壱岐市地域おこし協力隊の海女さん後継担当・合口香菜さん、玄海酒造・山内賢明会長が加わり、一支国博物館・須藤正人館長の司会でパネルディスカッションが行われた。
中西名誉教授は「壱岐の自然環境は開発が行われていないため人為的環境変化が少なく、昔からの環境が残っている」「地形がなだらかなので海岸線に道路が少なく、海浜植物への影響も少ないためたような自然海岸が残っており、それぞれに特徴的な海岸植生がある。国の天然記念物に指定されている辰の島の海浜植物群落は、無人島ゆえにこの30年間まったく変わっておらず、日本でもトップクラスの海岸だ」と植生の貴重さを強調した。それでも海岸侵食、草地の消失、リスの食害、外来植物の繁茂などで生物多様性は低下しつつあることも指摘した。
杉原研究員は「壱岐と対馬は貴重な固有種を含む世界最北のサンゴ礁として認定されている」「およそ4300年前に形成開始されており、歴史的価値も高い」「大きな河川が少ないこと、近くで真珠養殖が行われていることで、近年の人的活動、開発の影響を免れてきた」と壱岐のサンゴ礁の貴重さを説明。「近年は減少傾向にあるので、具体的な保全策、積極的な活用案を検討して欲しい」と地元での対策の必要性を説いた。
パネルディスカッションでは合口さんが「壱岐の海女漁は、採り過ぎないようにウエットスーツではなくレオタードを着用して行っている。過酷な仕事だが、自然・資源保護の考えが昔からあったということを誇らしく思っている」「海女文化がなくなった時は壱岐の自然が危機に陥った時だと思うので、ぜひ残していきたい。そのためには海を育てていくことが重要」と海女漁について意見を述べた。