社説

公平に我慢、享受することも必要

へき地保育所閉所問題は、閉所のための条例改正の議案が可決されたことで、ようやく決着した。閉所の方針は7年前に示されており、閉所時期は昨秋から公表されていた。なぜ、いまになって大きな問題になったのか、よく分からないというのが正直な感想だ。
保護者が子育てのために、自身の考える最高の環境を子どもに提供したいと考えるのは当然のことだ。その「最高の環境」がどのようなものであるかは、それぞれ理想の子育てがあるので十人十色だろう。それを否定することは誰もできないし、その環境を得るために声を上げることもまた当然のことだ。だが社会は、すべての人の希望を叶えられるようにはできていない。むしろ、大半のことを我慢して受け入れて行かねばならない。
議会ではSDGsの基本理念である「誰一人取り残さない」を拡大解釈して「1人でも反対者がいればその施策は立ち止まるべき」と主張する議員がいたが、本来、SDGsの主語は「行政」ではなく「市民」である。憲法25条で保障されている「健康で文化的な最低限の生活」と同様に、SDGsは最低限の生活や人権が保障され、取り残される人が1人もいないように、市民1人1人が意識を持つことを示している。多数決による民主主義とSDGsは、相反するものではない。
日本全国の人口減少が今後も急激に進展することは避けられない状況だ。本市はその日本の未来を先取りしている。へき地保育所だけでなく、今後も学校、庁舎を始め、多くの公共施設を集約化しなければ市経済は立ち行かなくなる。
将来的には市道、電気、水道などの公共インフラすら整備が難しくなり、住宅地を集約化するスマートシティ化を進めなければならなくなるかもしれない。
それに対して「生活に不便だ」「地域の活気がなくなる」という声は当然上がるだろうが、市民が公平に多少の我慢をしながら前に進まないと、本市に明るい未来はやって来ないのではないか。

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