社説

自治体DXの判りやすい説明を

来年4月の市長選へ向けて2人目の立候補予定者が名乗りを上げた。ともに元市職員で40歳代。市役所内での経歴も似ており、公約も基本的には白川市政の継承と改善を唱えている。今後も立候補予定者が出てくる見通しで、いまから選挙戦を占うことはできないが、いずれにしても一気に若返りが進むことは確かなようだ。
白川市長が次期市長選不出馬を表明した会見で、後任市長に対して「生成AI、DX、IoTなど先端技術の導入に関して、正しい判断をしてもらいたい」と思いを託していた。その面で2人の候補者はともに得意分野なので心配はないが、多くの市民はピンと来ていないだろう。
先端技術の導入によるまちづくりに昨年度から取り組んでいる「鎌倉市スマートシティ構想」を読んだが、記者もよく理解できなかった。自治体DXに、市民の暮らしに直接関係の深い部分があまり見当たらないのだ。
例えば国を挙げてあれだけ大騒ぎしたマイナンバーカードだが、2016年の制度スタート直後に取得し7年が経過したが、確定申告以外では1度も使ったことがない。市役所での各種申請でも求められないし、県壱岐病院でも使用できない。身分証明にマイナンバーカードを掲示すると「免許証か保険証はありませんか」と言われる始末だ。
キャッシュレス決済は便利に活用しているが、市役所で収入印紙を購入する時には現金だし、市役所売店でも使えない。テレワークの推進といっても、すでに大半の住居には光ファイバー網が構築されて設備的にはテレワークも可能だが、実際にテレワークでできる仕事はごく一部だ。「産官学民によるオープンイノベーションの環境整備」に至っては、市民にどんなメリットがあるのかさっぱり判らない。
新市長候補には、どのようなデジタルガバメントを行えば市民生活が楽になり、幸福感を感じられるようになるのかという点を、しっかりとしたアナログ言葉で説明してもらいたい。

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