社説

「誰一人取り残さない」難しさ。

市内18小学校区のトップを切って、10月1日に三島地区のまちづくり協議会が設立した。その迅速な対応、作成された計画書のレベルの高さなど、三島地区住民の協議会に対しての意欲とその団結力には感心した。まちづくり協議会のモデルとして、各地区も参考になる部分が多いに違いない。

この三島地区に続いて、年度内には5~6地区で協議会が設立される見通しとなっている。市が掲げる「市民協働のまちづくり」のための新たな組織編成は、心配されていたスタート面ではまず好スタートを切っているように見える。だがこのまちづくり協議会が実際に「誰一人取り残さない」というSDGsの基本理念を実現させるためには、多くのハードルがある。

例えば、地区に反社会勢力と関係がある住民が住んでいるケースは、壱岐でもあるだろう。「職業に貴賎(きせん)なし」とはいえ、やはり近所付き合いをしたいとは思わない市民が多いと思う。だが当然、憲法では基本的人権の尊重が定められており、自治体はもちろん、「誰一人取り残さない」協議会でもこれら住民を無視することはできない。

宗教の問題も難しい。憲法で信教の自由は保障されており、その信仰の内容に関して他人が口をはさむことではないが、一部の宗教では他の宗教、宗派に関して排他的な教えもある。最近の壱岐市のケースでは、特定の宗教的な考えを持つ移住者が急増している。

宗教にそれほど強い信仰心は持っていない住民から見ると、神道、仏教、キリスト教などとは違う価値観がある新興宗教や宗教的な考え方に傾倒している近隣住民に対して、あまり関わりを持ちたくないと思う人もいる。実際にどう関わったら良いのか、困っている人の声も聞く。

このような地域の難問に関して、協議会がどのように対処していけばいいのだろうか。協議会長、集落支援員、地域担当職員が判断できるレベルとは思えず、市がしっかりとした指針を示すべきではないだろうか。

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