先日、日没を迎えた午後8時頃、郷ノ浦町平人触の町谷川、清水橋付近で無数の光に包まれた、ホタルの乱舞を鑑賞した。実に美しく幻想的。産業都市“北九州”で育ったこともあるが、ホタルの数に圧倒された。
北九州市は約30年前の高度成長期に大きく発展した町。この時期に自然環境に大きな痛手を与え、“公害の町”と呼ばれていた。家庭からは同市小倉北区を流れる紫川に合成洗剤を含んだ下水が流され、水田には農薬が散布された。また、田畑の減少や河川整備でホタルの生活する環境が奪われていく。
同市で過ごした幼年期に慢性気管支炎を患った。発作止めの予防薬を欠かさず飲む毎日。医者からは「空気の綺麗な田舎で暮らせば、発作は出なくなるかも知れない」と言われていた。実際、壱岐にIターンで来てからは発作も起きず、薬も飲まなくなっている。「幼年期の生活環境がいかに影響していたのか」と考えてしまう。
そんな同市建設局内に全国的にも珍しい“ほたる係”がある。仕事は「北九州市をホタルなどの身近な生きものがたくさん住むような町にすること」。ホタル保護育成団体の活動資金を一部援助する支援活動や“北九州ほたるマップ”を発行する啓発活動、ホタルや水辺環境を学ぶ市民講座「ほたる塾」を開催する育成活動などを行っている。
同市は「ほたるのふるさとづくり」の活動を通して、ホタルが棲める河川整備や下水道の整備を行い、その結果、60以上の河川にホタルが飛翔するようになった。
鞘ヶ谷ほたる公園(同市戸畑区)では毎年5月下旬に“鞘ヶ谷ホタルまつり”を開催。夜空に優雅に舞うホタルとともに、ステージでの演芸大会や出店などが催され、近年では来場者が1万人を超えるほどの賑わいになっている。
壱岐にも“ホタルまつり”はどうだろう。ホタルの数は圧倒的多さなので、島外からの集客も期待できる。宝泉寺温泉(大分県九重町)では、ほたるイベントを毎年開催。温泉街の宿泊施設は“ほたるの宿”としてお得な宿泊プランを組み、集客に結びつけている。
イベントで自然環境を壊さないよう、マナーを守らせる工夫さえ出来れば不可能ではない。