住民投票結果は大きな差がついた。市長は記者会見で「ここまで開くとは思っていなかった」と語ったが、個人的には「意外に賛成票が多かった」という印象を抱いた。
壱岐市だけでなく、住民は「箱もの建設」に強い嫌悪感を抱いている。その象徴だった北海道夕張市の例などが度々テレビなどで取り上げられ、「箱もの」というだけで「税金の無駄遣い」というイメージが強く植え付けられている。箱もの建設に関する住民投票や、建設の是非が争点となる選挙では、その状況がどうあれ、全国的に見ても圧倒的に「反対」が強いものだ。
昨年7月に実施した市民アンケートは、賛成30・2%、反対64・3%、どちらでも良い5・5%。今回の住民投票は、「白票」を「どちらでもよい」に換算すると、賛成31・9%、反対66・9%、どちらでもよい1・2%。市が必要性の説明を繰り返しても、反対派がチラシ配布や街宣活動をしても、結果はほとんど変わらなかったと見ることができる。それだけ「箱もの」に対してのイメージは根強い。
いまや壱岐市にとってなくてはならない存在になっている文化ホールや一支国博物館も、建設時は大きな反対があったし、もし住民投票を行っていたら建設されていなかったことだろう。
庁舎建設は市民の判断で中止となる。そのことは尊重しなければならない。だが反対を唱えていた人たちが建設中止後の対案を示しているわけではない。
分散方式による様々な経費の「無駄」を今後どのように解消していくのか、防災拠点としての役割を果たさなければならない郷ノ浦庁舎、勝本庁舎が耐震改修・長寿命化によって安全安心の施設と成りうるのか、4庁舎が寿命を迎える約20年後の庁舎建設へ向けて積立金を行うのかなど、今後の市の課題はむしろ膨らんだ。ネパール大地震で老朽化した建物、文化遺産が倒壊した映像を見ると、その思いはますます強くなる。
壱岐市の生き残りをかけて、地方創生の動きが今後、本格化する。文化庁が指定した「日本遺産」にも指定され、さらには国境離島新法の対象地域となることも濃厚な状況になっている。そのなかでインフラ整備をすべて「無駄」と判断して見送っていたら、本市はジリ貧の道を辿りかねない。
本市の今後の施策は全国から注目を集めるだけに、どのような形で「攻め」の姿勢を見せることができるのか、そのかじ取りを担う白川市政の責任はさらに大きくなる。
(高瀬 正俊)