庁舎建設に関して壱岐新聞社が感じた疑問について、市庁舎建設対策課・下條健輔課長、総務部・眞鍋陽晃部長らに聞いた。
▼現4庁舎の耐震診断、コンクリート強度検査を行っていないので、新庁舎の必要性が明確になっていない。
‐眞鍋部長 子どもたちの安全安心を第一優先に考えていたので、小中学校舎の耐震診断を優先して実施してきたため、庁舎の診断が遅れた。次の議会に診断・検査の費用を盛り込んだ補正予算案を提案し、可決次第、早急に実施する。
‐下條課長 勝本庁舎では雨漏りのため何度も工事を行っているが、根本的に解決していない。各庁舎とも壁や天井のクラック(ひび割れ)が多く、老朽化は明らかに進んでおり、改修費用がかさんでいるのも確かだ。
国は、平成8年に「官庁施設の総合耐震診断・改修基準」を定め、防災拠点施設の耐震性能(Is値)を「0・9以上を目標とする」と示している。4庁舎とも昭和56年以前の建設で、建設時点でこの数値を超えていない。
一部で、国民宿舎壱岐島荘は建て替えずに耐震改修だけを行ったと指摘されていたが、同荘の敷地は現在の建築基準法では建て替えができない。また宿泊施設と庁舎では構造もまったく違い、単純に比較できるものではない。
▼市民は長寿命化工事を行えばコンクリート耐用年数が延びると誤解している。市の説明が不足している。
‐下條課長 長寿命化工事はいまの骨組みを利用して、雨漏りや劣化補修など内外装の設備を新しくし、バリアフリー化など建物の機能性、性能をいま求められている水準まで引き上げる改修工事のことを言う。
建物を本来の寿命まで利用するために行うものであって、寿命自体を延ばすものではない。昭和40~50年代に建設された鉄筋コンクリート造りの建物の骨組みの寿命は概ね50~65年と言われており、それを延ばすことができないことを理解してもらいたい。
▼建設を先延ばしした場合、「平成31年度以降は庁舎建設に対する補助金等は一切なく、全額市負担となる」と説明しているが、20年、30年後の国、県の施策について「一切ない」と言い切れるのか。
‐眞鍋部長 現時点で、制度やその計画が一切ないということ。行政というものは、想像、仮定で物事を言うことはできない。現時点でなければ、「ない」と言うしかない。
▼公開討論会を実施しないのは何故か。
‐眞鍋部長 住民投票条例第10条で、「市長は、住民投票の適正な執行を確保するため、投票資格者が判断し、意思を明確にするために必要な庁舎建設に関する情報を、公平かつ公正に提供するよう努めるものとする」と定められている。
市も公平公正な立場であり、反対意見のある者と討論を行う立場にはない。賛成、反対の市民同士が討論会を行うことを妨げているわけではない。市が配布したチラシも、弁護士立ち合いの下に作成し、公平公正さを担保している。
▼反対する会が「盈科小は改修もせずに60年持ち、さらに耐震改修して使おうとしている」と主張している。
‐市教育委員会 盈科小校舎は5つの建物区分があり、このうち昭和48年、昭和55年建設の3つはいずれもIs値が0・7を超えている。昭和32、33年建設の2つはIs値が0・55であり、今年度の改修で文部科学省が定めた「Is値がおおむね0・7を超えること」の基準を満たすことができる。