壱岐市庁舎建設基本構想案の4町での内容説明会が6日、石田農村環境改善センターで日程を終了した。参加者数は計213人で、このうち125人が4月29日の郷ノ浦会場(文化ホール中ホール)に集中し、現庁舎がある同地区での新庁舎建設問題への関心の高さが示された。他の3地区では同案への賛否がほぼ半々だったのに対し、郷ノ浦地区では大半が反対意見で占められた。
郷ノ浦会場での反対意見でもっとも多かったのが、UPZ30㌔に対する考え方だった。郷ノ浦町の大半が同圏内に入ることもあり、「玄海原発事故が起こった際には、全島避難が避けられないし、それを想定した訓練も行っている」「風向、風速によっては、放射能が壱岐全域を覆うのに数分の差しかない。庁舎の位置が圏内でも圏外でもほとんど意味がない」「原子力安全委員会のワーキンググループではUPZを50㌔に見直そうという意見も出ている」「もし原発事故があったら、那賀に逃げるよりも文化ホールの地下に逃げた方が安全だ」などと、同案で2か所に絞り込まれた建設候補地がともに30㌔圏外だったことに対して、異議が相次いだ。
市庁舎建設検討委員会・長岡信一副会長は「国の基準が概ね30㌔である以上、避難などの指示を出す防災拠点の市役所は、その圏外に建てるのが望ましい、という考え方だ」、菊森会長も「国の指針が変われば、当然、計画も変更するべきだが、現時点ではできるだけ被害の少ない場所を選ぶ必要がある」などと説明したが、参加者は納得していない様子だった。
建設候補地として当初挙げられた7地点に対しての不満もあった。「郷ノ浦町から4か所が挙げられたが、実際に現地調査が行われていないところもある。また明らかに面積要件を満たしておらず、ダミーとして挙げただけではないのか。かたばる病院跡地なら2万平方㍍あるのに、候補に入っていない」「最終候補に残った亀石地区だが、この予定地では双六古墳に掛かるし、遺跡調査を行ったら建設はまず不可能。那賀地区に決まっているのではないか」などの意見も出た。
これに対して白川博一市長は「候補地として答申はされているが、最終的には市民皆様と議会で決めていただくことだ」とアンケートなどで市民の意見を聴取することを改めて強調した。
約30億円の建設費用のうち95%が合併特例債を財源にできることのメリットについて詳しく説明があり、「いずれは建て替えが必要になるのだから、合併特例債が活用できるいまがラストチャンス」と賛同する意見もあった一方、「合併特例債も借金には変わらない(15年間の償還で市の実質的な負担は約9・2億円)。次の世代に大きな借金を残したくない」との意見もあった。
市は、市民アンケートなどで今年中に建設の是非を決め、建設する場合は来年秋までに建設場所を決定するプランを描いているが、郷ノ浦会場の参加者から「建設は認めても、郷ノ浦町からの移転には断固反対」という意見もあっただけに、意見集約方法など今後の市の進め方が、庁舎建設問題を大きく左右しそうだ。
郷ノ浦会場の様子は市ケーブルテレビが撮影を行ったが、市の方針で放送日はまだ決まっていない。