社説

野上さんの「あきらめない心」。

26日に行われたジャカルタ・アジア大会の女子マラソンで、野上恵子さん(32=十八銀行)が2時間36分27秒で銀メダルに輝いた。野上さんの所属する十八銀行女子陸上部は、5年前から本市で合宿を行っており、野上さんも毎年、参加している。今年は6月28日から7月5日まで、筒城ふれあい広場ジョギングコースなどでトレーニングを行い、6月30日には芦辺ランニングクラブの小学生ら80人を対象に陸上教室を開催。子どもたちと楽しみながら、基礎練習に汗を流した。

それからわずか2か月。子どもたちと一緒に練習をしていた野上さんが、日の丸を背負ってスタジアムで誇らしげな笑顔を見せていたのだから、テレビで応援していた壱岐の子どもたちの興奮ぶりは十分に想像できる。しかもそのレースぶりは圧巻だった。これまでの日本のマラソン選手は、有力選手の動きを見ながらレースを進めることが多かったが、野上さんは序盤から自分のペースで走って集団を先導し続けた。25㌔過ぎで仕掛けた世界女王チェリモさんにはついていけなかったが、その後も韓国、北朝鮮選手にピタリと後ろにつかれる不利を承知で2番手集団を先導し、40㌔過ぎの仕掛けで北朝鮮選手を突き放して2着。惚れ惚れするような堂々としたレースだった。

レース中は野上さんの陸上歴をゲスト解説の高橋尚子さんが何度も紹介していた。中学、高校時代はケガに苦しみ大会にはほとんど出場できず、十八銀行入行後もトラック、駅伝では目立った活躍ができずに「引退を覚悟して最後のレースのつもり」で初めてのフルマラソン、2015年名古屋ウィメンズに出走したところ、いきなり2時間28分台で6位入賞。29歳でマラソン人生の幕を開けた。今後はすでに出場権を確保している来年9月のMGCで東京五輪の代表を目指すなど、さらにハードな毎日が待っていると思うが、いずれ機会があれば是非、本市で講演を行い、子どもたちに「あきらめない心」を伝えてもらいたい。

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