社説

交通ビル撤去を発議すべき。

3日に本島を直撃した台風7号の強風で、郷ノ浦町市街地の壱岐交通ビルの壁の一部が落下した。同ビルの危険性はこれまでも指摘されており、市議会一般質問では7回も取り上げられている。これまでの状況として、平成26年12月の市空き家等審査委員会で危険家屋と認定。27年2月に所有者に勧告書を送付。同5月に空き家対策特別措置法が本格施行され、同7月に市と所有者が面談。所有者は「解体する」と話したが、その後は進展していない。

同法により、倒壊の恐れや衛生上問題のある空き家(特定空家)の所有者に対して、市町村が撤去・修繕を勧告、命令ができ、勧告を受けると固定資産税の優遇が受けられなくなり、命令に違反すれば50万円以下の過料に処せられ、強制撤去も可能となる。強制撤去を行う行政代執行法では、撤去費用は所有者に負担を求めることができる。それならば早々に撤去を行えば良いように思えるが、いくつかの問題がある。所有者が撤去費用の支払いを拒否した場合、費用は国税、地方税に次ぐ順位の先取特権を有するが、それでも状況を考えると回収することは相当難しく、公費投入が余儀なくされる。1億円とも言われている撤去費用を市が支払うことは、当然、市民の大きな反対を受けることになるだろう。

特措法施行後、特定空家撤去の行政代執行はまだ全国で数例しか行われておらず、鉄筋建コンクリート建てビルは例がない。行政代執行は行政の強権力とも見られかねないだけに、壱岐市が躊躇する気持も理解はできる。また市内には他にも危険家屋は多く存在しており、「交通ビルだけ強制撤去するのは不公平」という声が出てくることもあり得る。じつに難しい問題を多く抱えているが、これだけ議会でも論議されていれば、もし事故が起こった時には私有物ではあっても、市、議会の責任が問われることになる。撤去を議会が発議するなど、議会主導で問題解決に乗り出すべきではないだろうか。

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