重家酒造(横山雄三社長)は4日、壱岐産の酒米で日本酒をつくるために、勝本町の農業、川上治さん(56)と契約して酒造好適米「山田錦」の栽培を始めた。本市で日本酒用の山田錦を栽培するのは初めて。企画に賛同した50人が丁寧に苗を植えた。順調に生育すれば10月中旬に収穫。初年度はまだわずかな量だが、新酒なら来年早々、冷やおろしなら来秋に、壱岐産山田錦でつくった純米大吟醸酒「横山五十」限定品が誕生。田植え写真をラベルにして、賛同者とパーティーを開く計画を立てている。
重家酒造は壱岐焼酎に加えて、2013年から日本酒の醸造を始めた。横山太三専務(44)が中心となり、まだ地元では設備が整っていないため、山口県で銘酒「東洋美人」を醸造している澄川酒造に場所を借りて、純米大吟醸「横山五十」を1・8㍑瓶換算で年間約3万本を生産している。
兵庫特A区生産の山田錦を精米歩合50%まで磨き上げた「横山五十」は果実の芳香と切れの良さで、日本酒に抵抗感があった女性、外国人にも高い人気を誇っている。
14年に開催された九州産日本酒コンテスト「九州S1グランプリ」で準優勝。15年にはイタリアのミラノ万博に連動して同地で開催された日本酒プロジェクト「SAKENOMY」で提供。今年2月に博多駅前などで開催された日本酒イベント「CRAFT SAKE WEEK」でも「十四代」など日本を代表する銘酒とともに提供され高評価を得るなど、着々とその地位を築いている。
横山専務は「体制を整えて、壱岐の酒米を使って壱岐で醸造することが夢だった。来年には醸造所建設も予定しており、酒米づくりも始めなければならない時期になった」と動機を説明した。
米粒の大きな山田錦は高精米が可能なため酒造好適米の代表格で、日本酒鑑評会では常に上位を独占している。だが長稈(茎が長い)で米粒も重いため倒伏しやすく、またイモチ病にも弱いため、栽培は難しいとされている。
栽培を行う川上さんは「風が強い壱岐で栽培するのは簡単ではないと思うが、壱岐でも平成17~19年に焼酎醸造の米麹用に山田錦を栽培した農家があった。諫早や糸島などでも栽培しているのだから、気候的には問題がない。耐倒伏性を高めるために肥料をなるべく少なくして、中干しをしっかり行い、手を掛けて健康で元気な稲を育てていきたい」と栽培方法を考えている。
川上さんの田んぼで初年度に山田錦を栽培するのは4面5反(約5千平方㍍)。計画通りなら1反で360㌔、5反で1・8㌧の山田錦が収穫できる。これを50%精米すると900㌔。「横山五十」3万本のうち約3%程度に使用できる。
横山専務は「まずは第一歩。栽培がうまくいくようなら契約農家を増やして、増産をしていきたい。農家の所得向上にもつながるし、壱岐産酒米で壱岐の日本酒が誕生すれば、壱岐の日本酒文化が市民に定着し、地域振興にもつながっていく」と今後の展開に期待を掛けている。