壱岐高校(鶴田勝也校長、430人)の放送部(坂口茉亜紗部長)が第36回九州高校放送コンテスト県大会(16日・諫早市たらみ図書館)のラジオ番組部門で最優秀賞を獲得し、九州大会および来年度全国高校総合文化祭(来年8月、滋賀県)への出場権利を獲得した。同部の全国大会出場は4年連続となる。また朗読部門でも2人が入賞を果たした。20日の全校集会で作品上映・朗読実演と表彰が行われた。
ラジオ番組部門最優秀賞作品は、山内歩夢(あゆむ)さん、町田諒(まこと)さん、神山果歩さんの1年生3人が担当した「『原爆物語』~未来へつなぐ声~」。
今年5月に発見された長崎原爆についての音声テープ「原爆物語」(昭和28年録音)を基にして、声の主である石田壽(さとし)さん(当時、長崎地方裁判所所長)の息子・譲一さん、テープの音声解析を行った長崎総合科学大学の横手一彦教授へのインタビューで構成され、原爆の悲惨さと、風化されることなく現代そして後世に伝えていかなければならないことを訴えかけている。
題材は、横手教授と親交があった放送部顧問の稲尾和彦教諭が提案。録音テープの提供を受けた。「壽さんの、被爆された娘の雅子さんに対しての強い思いに感激し、当時からいまの人たちと同じく世界平和への思いを持っていらしたことに驚きました」と町田さんは感銘を受けた。
古いテープではっきりとは聞き取れない箇所が多いため、インタビューを交えた構成を考えた。「8月の平和授業に横手先生が壱岐高へ来られた時に、2時間にわたってインタビューをしました。雅子さんは体調を崩していらして話を聞けなかったので、沖縄に住む譲一さんにも電話で40分ほどインタビューして、壽さんの人となりなどを聞かせて頂きました」(山内さん)。
さらに雅子さんの手記「雅子斃(たお)れず」を読み、「手記が、当時はGHQの検閲で出版できなかったこと、それでも戦い続けた雅子さんのことをなどを知り、“伝える”ことの大切さと難しさも、番組のテーマにしました」(神山さん)。
テープの文字起こしは他の1年生部員も総出で手伝い、約4か月かけて作り上げた初めての作品が、県大会で認められた。インタビューができなかった雅子さんからは激励のはがきをもらった。「皆さんに助けてもらったおかげです。僕たちに何ができるのかを考え、家族愛にスポットを当て、高校生目線で作り上げたことが良かったのだと思います」(山内さん)。3人は、まずは12月17~19日に宮崎市で開催される九州大会へ向けて、作品をさらに練り上げていく。