玄海原子力発電所の再稼働が秒読み段階に入っている。3号機は再稼働の前提となる原子力規制委員会の審査を全て終了し来年1月上旬を、4号機も3月上旬の運転再開を九州電力は見込んでいる。今年4月には立地自治体の佐賀県・山口祥義知事も再稼働に同意しており、法的な障害はない状況だ。
14日の市議会一般質問で白川博一市長は「玄海原発は100%安全ではなく市民が不安を抱いている。事故が起きた際には風評被害も予想される。また4月議会では議員発議の再稼働反対意見書が全会一致で採択された。再稼働反対は市民の総意であり、私も終始一貫反対を主張している」と改めて強い反対の意思を表明した。
壱岐市民にとって百害あって一利なしで、自治体の長として反対表明は当然だが、現実問題としては立地自治体以外の意見はほぼ効力がないに等しい。再稼働は動かし難い事実となっている。
それならば自治体として、現実を直視することもまた求められる。国の指針が「30㌔圏外への避難」である以上、本市の避難計画において最も問題なのが30㌔圏内の2次離島である三島地区からの脱出方法だろう。
時化(しけ)によってフェリーみしまが欠航することは年に数回はある。それが原発事故と重ならないとは限らない。三島地区では体育館の放射性防護工事を進めているが、「核シェルター」のような気密性が担保されるわけではない。最も望ましいのは陸路で脱出できる架橋である。
平成11年に完成した珊瑚大橋(大島~長島)は6年の工期で全長294㍍、総工費約22億円の事業だった。大島~原島架橋、嫦娥(じょうが)~大島架橋となればそれ以上の工期と数十倍の工費が必要かもしれぬが、原発に費やされる莫大な費用に比べれば、驚くほどの金額ではない。
再稼働がストップできないのならば、九電や国に対して三島地区の架橋を要求することは、市民の安全安心な暮らしを守る自治体として、当然のことに思える。