田んぼをキャンバスに見立て色の異なる稲を使い、巨大な絵を作り出す田んぼアートが話題だ。1993年、青森県田舎館村(いなかだてむら)が村おこしの一環として田舎館役場裏手の田んぼで始めたのが最初とされ、近年、全国各地で100か所以上が実施されるようになった。
同村には今年、3か月間で20万人を超える観光客が押し寄せた。田んぼアートは単なる遊びや物珍しさから、重要な観光資源へと変化している。
田舎館村は津軽平野に位置し、青森県では一番小さい、海もなければ山もない村。田んぼアートが生まれたきっかけは「紫と黄色の古代米を使って何か出来ないか」との思案からである。1993年から2001年までは岩木山をモチーフにした同じ絵をテーマにしていたが、03年にチャレンジした「モナリザ」が観光客から「太って見える」「似ていない」などの不評を買った。
村ではこの失敗を機に展望台上のある1点から見て、絵柄が歪まずに見られるようにと、遠近法を採用。近年では「葛飾北斎の富嶽三十六景」「弁慶と牛若丸」「竹取物語」「悲母観音と不動明王」など、難易度の高い作品に評価が高まり、今年は「花魁とマリリン・モンロー」と、4月に創立50周年を迎えた円谷プロダクションの協力を得て、巨大変身ヒーロー「ウルトラマン」を披露した。
村は「田んぼしかない」と言われるくらい、観光資源が少ない。その環境で“何かを作り出す”ハングリーさが田んぼアートの大成功に繋がったのではないか。また観光客が“観てみたい”という気持ちにさせる、全国屈指の技術力。その両方が上手くかみ合った事例だと言える。
壱岐市には「深江田原」と呼ばれる諫早平野の広さに次ぐ、長崎県第2の平野がある。古代米を使ったイベントも壱岐では行われているが、観光客誘致には結びついていない。
また、市は福岡にも商圏が近く、自給自足が出来る島でもあるため、「ハングリーさに欠けるところがある」と、地域活性化を生業にしている元九州大学特任教授の戸島義成氏が言っていた。どん欲に、壱岐島民だけで満足しない、日本一を目指すようなイベントが出来ないものだろうか。