社説

社説・出玉規制が依存症対策なのか

政府がカジノを含む総合型リゾートを整備するためのIR実施法案を今秋の臨時国会に提出する方針を示したことで、ギャンブル依存症対策が注目を集めている。
警察庁は8月24日、パチンコの出玉を3分の2程度とする規制強化を決定。来年2月1日から施行し、3年間の経過措置期間を設ける。標準的な遊戯時間(4時間)で玉の獲得総数を発射総数の1・5倍未満とし、大当たりの上限を現行の2400個から1500個に引き下げる。これにより4時間で客の儲けは現行の十数万円から5万円を下回るようになり、儲けが減ることで負けた分を一気に取り戻そうとのめり込むリスクが減るのだという。
私はまったくパチンコをやらないので、この出玉規制がどの程度、パチンコ依存症対策に効果があるのか実感できないが、公営競技記者の経験からすると、的中時の倍率が下がればなおさら大金を賭けるようになり、さらに長い時間を費やすようになる人が、一定数程度以上はいるのではないかとも想像できる。
不思議なのは、あくまでも景品を獲得する「遊戯」である建前のパチンコに対して、警察庁が金額を出して「客の儲け」などと表現していることで、これを機にグレーゾーンの「三店方式」などというものを撤廃し、正当な課税を行い、自治体の収入につなげた方がよほど健全で、依存症対策にも真正面から取り組める気がしてならない。
程度の差こそあれ、どんな世界にも「依存症」はあり、商売というのは客の依存症をあおることで成立している部分がある。毎日の飲酒はアルコール依存症、24時間仕事のことを考えているワーカホリック、ギャンブル以上にお金を費やす趣味も依存症だろう。ギャンブルをやる人はすべて、多少なりとも依存症の傾向はあるはずで、「病気」との線引きは極めて難しい。
IR実施法案を通すために、表面上とも思えるギャンブル依存症対策を行うことが国の役割なのか、どこか的外れな気もする。

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