新藤義孝総務大臣(56)が16日、選挙区以外の現役閣僚としては初めて壱岐市を視察に訪れ、一支国博物館、柚子生産組合加工場、壱岐の蔵酒造、少弐公園などを関係者らの案内で見学、4人の行政相談員、郷ノ浦郵便局長、地域おこし協力隊と面談するなど、合併10年を迎えた壱岐市の現状を精力的に視察した。
2009年にスタートした「地域おこし協力隊」制度は総務省の「地域力の創造・地方の再生」事業の柱となっており、14年度は全国318自治体で978人が任務に就いている。新藤大臣は「先日、安倍総理から、協力隊を3年間で現行の3倍増にするとの発表があった。壱岐島は離島という条件の中で、隊員が非常に活躍していると聞いている」と海女さん後継者の合口香菜さん、滞在型交流観光・情報発信担当の徳永満智子さん、農業担当の堀田九三男さんの3人(物産振興・特産品開発担当の豊永レイ子さんは出産育児休暇中)を激励した。
3人からこれまでのミッションの成果について報告を受けると「3人とも、任期の3年後も壱岐に定住する気持ちが聞けたことが嬉しかった。豊永さんが地元の人と結婚、出産されたことも、人口減少社会の克服につながる。これまで隊員の6割は任期後も起業するなどして事業の継続、定住がなされている。仲間を呼ぶことによって、社会動態(一定期間における転入・転出に伴う人口の動き)がプラスになった地域もある。皆さんは日本の希望の星になる」と隊員の役割の大きさを強調。「皆さんの心意気を感じた。情熱と努力が身を結ぶように、全面的に支援していきたい」と協力を約束した。
堀田さんは「大臣に現場の声を直接聞いて頂けて、感激した。時間を延長してまで1人1人に声を掛けて頂き、勇気が沸いてきた」と話した。
壱岐の蔵酒造では工場を見学後、試飲コーナーで17種類すべての試飲グラスを飲み干し、「どれもおいしいが、40度以上のものはどっしりとしていて、印象的ですね」と42度で5年間長期熟成の「二千年の夢」と、40度で伝統的技法を生かした「大祖」を絶賛した。
原田頴一社長は「壱岐焼酎はすごい、と何度も言って下さった。これだけ本気で試飲してくださる人はまずいない。光栄の至りです」と感激した。
視察後に少弐公園で記者会見を行った新藤大臣は、初めて訪れた壱岐の印象について「合併10周年の記念式典の際、都合がつかずにキャンセルしたので、約束を果たしたいとずっと思っていた。人々が穏やかに、誇りを持って暮らしている印象を受けた。かつて大陸の玄関口だったことがしのばれるDNAを感じた」と話した。
壱岐が取り組んでいる地域活性化策については「地域活性化プラットフォームのモデルケース事業の1つに壱岐市のプロジェクトが採択(壱岐東部漁協=漁船廃油と遊休労働力を活用したナマコなどの養殖・高付加価値化・販売による地域資源循環創造など)されている。過疎集落自立再生緊急対策事業の交付金で整備されたゆず加工場も立派に稼動しており、6次産業化は順調に進んでいる。全国一律ではなく、その地域ならではのやり方、個性、伝統を伸ばしていくことが肝心。壱岐の元気を日本全国へ広げていきたい」と高く評価した。
有人国境離島の振興・法制化については「離島の経済の活性化は日本の安全保障につながる。別枠での振興が必要だ」と離島振興法や過疎地域自立促進特別措置法とは別枠での支援を検討していくことを明言した。